研究課題/領域番号 |
24580003
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
横井 修司 岩手大学, 農学部, 准教授 (80346311)
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キーワード | 育種学 / ストレス / シグナル伝達 / 相転移 |
研究概要 |
本研究は、重要作物・モデル植物であるイネ、ダイズと研究の進んだモデル植物であるシロイヌナズナを用い、生存限界に近い環境ストレスが植物生活環で最も重要な生存戦略である開花に及ぼす影響を分子レベルで解析し、その知見を植物が環境ストレスを回避して開花・結実することができるような育種へと応用することを目的とする。本年度は以下の実験を行った。 <シロイヌナズナを用いた実験>野生型において塩ストレスによる早期開花の現象の再現性を確認するため、Col-0の野生型を様々な塩濃度(0~240 mM)、様々な発育ステージ(1~19日)で24時間処理し、その後に通常の生育条件に戻して開花の表現型を確認した。その結果、発芽後9日目での処理は塩濃度に比例して開花が遅れること、発芽後12日~19日では240 mMの塩濃度で開花が早くなることが見いだされた。 <イネを用いた実験> イネの晩生変異体(日本晴、台中65号、ひとめぼれ、あきたこまち背景)とそれぞれの野生型を用いて実験を行った。晩生変異体は長日・短日・自然条件の用いた全ての日長において野生型よりも晩生の表現型を示した。また、日本晴の変異体において原因遺伝子を次世代シークエンサー解析によって同定したところ、既知のEhd2遺伝子の変異体で有り、新しいアリルであることが明らかになった。 <ダイズを用いた実験> ダイズにおいてはエンレイとPekingの初期生育において解析を行った。幼若栄養生長期から成熟栄養成長期への移行は、第4葉期から5葉期の間に起こり、葉の大きさ、トライコームの数など様々な要因を伴っていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレス経路と開花経路を統合する候補遺伝子の一部について解析を行い、シロイヌナズナについては塩ストレス条件下で早期開花を促す条件を明らかにした。イネの晩生変異体の解析では、Ehd2の新しい変異アリルを単離し、このアリルが晩生ではあるが開花に至という新しいアリルであることが明らかとなった。また、ダイズにおける解析からは、幼若栄養生長期から成熟栄養生長期への移行に関わる時期と表現型を明らかにすることができた。以上のことから、当初計画していた研究は概ね遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナを用いた開花経路とストレス経路の統合因子の解析では、開花に関わる因子の遺伝子とストレスに関わる遺伝子の発現パターンをデータベースで調査し、共発現する遺伝子群を同定、それらの変異体を解析することで、開花とストレスの相互関係を明らかにすることを目的に研究を推進する。イネにおける開花・ストレス経路の統合因子の検証では、既存の変異体と新たに入手した変異体の表現型を解析する。また、発現解析を合わせて分子レベルで説明する。また、相転移の分子マーカーとして近年同定されたmiR156, miR172の発現パターンを調査する。ダイズの研究では、コアコレクションを用いて幼若栄養生長期から成熟栄養生長期への移行に関わる表現型を調査し、ダイズにおいて一般的なことであるか否かを調査し、その因子の単離に向けた交配実験を行う。以上の結果から、環境変化に対して植物がどの様に表現型を変化させ、シグナル伝達を行っているかを検証し、その一般性や特異性を明らかにすることを明らかにする。
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