研究課題
本研究は、重要作物・モデル植物であるイネ、ダイズと研究の進んだモデル植物であるシロイヌナズナを用い、生存限界に近い環境ストレスが植物生活環で最も重要な生存戦略である開花に及ぼす影響を分子レベルで解析し、その知見を植物が環境ストレスを回避して開花・結実することができるような育種へと応用することを目的とする。<シロイヌナズナを用いた実験> 塩濃度を0~180 mMとし、長日条件(16h 22℃/8h 18℃)で栽培し、開花期の評価として抽苔日と抽苔時葉数を計測した。2遺伝子(At1G13930、At4G35300)の各2アリルずつ4系統の耐塩性を評価した。塩処理から一週間後に耐塩性の評価として生存率と根長を計測した。その結果、全系統において塩濃度依存的に開花が早くなる傾向が認められ、ストレスによる早期開花経路に2つの遺伝子が関与している可能性が示された。<イネを用いた実験> 日本晴晩生変異体(以下nip-late)は日長感受性を失い、野生型よりも開花が遅延する新規の表現型を示した。長日中温区と長日高温区において開花期を調査した結果、nip-lateは長日中温区では120日で開花したが、長日高温区では200日経過しても開花しない表現型を示した。これらのことから、Ehd2は先行研究で示された光周性開花経路で機能するだけでなく、温度依存的開花シグナルに関与している可能性が本研究によって示唆された。<ダイズを用いた実験> コアコレクション約80系統の解析を行った。幼若栄養生長期から成熟栄養成長期への移行は、葉の大きさの変化としてタイミングは異なるが、全ての系統において観察された。また、miRNA156とmiRNA172の発現パターンと相転移の移行が一致する系統も見られた。上記の結果から、miRNAの発現パターンと葉の変化は必ずしも一致しないが、指標の一部となる事が明らかになった。
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DNA Research
巻: 21 ページ: 481-490