本年度は、前年度に引き続き除草剤抵抗性程度に差のある品種間交雑後代を供試し、標的とする抵抗性遺伝子の座乗位置の絞り込み作業を進めた。すなわち、供試分離集団個体を供試して標的とするチオカーバメート系除草剤抵抗性遺伝子の形質評価及び候補領域の近傍マーカーの遺伝子型調査を実施し、16の遺伝子が推定されるSSRマーカー間の領域をさらに絞り込むことを試みた。その結果、1個の遺伝子の存在が示唆される約40kbpの染色体領域が該当領域と推定された。さらに、この領域内の遺伝子の交雑親の遺伝子型と抵抗性表現型とが完全に共分離するという結果を得た。一方、40品種強の品種について除草剤抗性形質と当該遺伝子の遺伝子型を調査した結果からはこの遺伝子が除草剤抵抗性を支配するとの結論を得ることはできなかった。 また、複数の大学の学生を対象とする講義の中で世界各地で現在栽培されているGM作物の概要とNBTと総称される新たに実用化が具体化している遺伝子改変技術を概説した上でGM作物について意識調査を行った。その結果、合理的判断が必ずしも無意識の警戒感を超えられないことが確認され、本課題の所期の目標であった遺伝子改変についての実習教材の必要性を実証する結果が得られた。 本研究は、GM作物についての科学的理解を深めGM作物に対する合意的判断を促すためには具体的教材の作成が有効であるとの着想から新規除草剤抵抗性遺伝子を用いた教材キットの作成を目指した。そのために、新規除草剤抵抗性遺伝子の同定単離を目標として取組み、単一の候補遺伝子を特定することができた。研究期間内にその遺伝子が目的遺伝子であることを確認するには至らなかったが、目的遺伝子の有力な候補遺伝子が特定され、所期の目標の達成に向けて大きく前進する成果が得られた。なお、研究成果の公表は、知財価値を棄損しないことを考慮し今後適切な時期に行うこととした。
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