研究課題/領域番号 |
24580013
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
多田 雄一 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (80409789)
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キーワード | ヤトロファ / 耐乾性 / 浸透圧耐性 / プロリン / ラフィノース / メタボローム |
研究概要 |
本研究では、ヤトロファのもつ高度な耐乾性の機構を解明し、耐乾性育種のための新規な技術基盤を提供することを目的として、下記の2つの実験項目を行なった。 研究項目①「cDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析」、研究項目②「ヤトロファのメタボローム解析」 ①では、サブトラクション法により同定した乾燥条件で発現が誘導されるJcDR1遺伝子のcDNAを導入したシロイヌナズナの芽生えをマンニトールとソルビトールを添加して浸透圧を高めた培地(計300mM)に移植して高浸透圧耐性を検定した。組換え植物の浸透圧耐性は野生型と差がなかった。 ②では、メタボローム解析で乾燥処理により根で124倍に増加したプロリンの含量を定量的に解析し、10倍程度の乾燥応答的な蓄積を確認した。また、乾燥処理で含有量が高まるラフィノース属オリゴ糖類の合成に関与するヤトロファの遺伝子を導入したシロイヌナズナの解析を行った。ヤトロファのゲノムデータベースにある9種のラフィノース合成酵素遺伝子のうち、乾燥処理で発現量が高まる遺伝子(JcRS2, JcRS9)を導入したシロイヌナズナを300mMマンニトール含有培地に移植して浸透圧耐性試験を行った。しかし、野生型と比較して生育量が高い系統はなかった。また、他の植物でラフィノース合成の律速酵素であることが知られているガラクチノール合成酵素遺伝子(Gol)を導入したシロイヌナズナを300mMマンニトール含有培地に移植して浸透圧耐性試験を行ったが、野生型と比較して生育量が高い系統はなかった。マンニトールは植物に対する毒性を有しており、高浸透圧処理として適していない可能性があることから、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた高浸透圧培地による検定方法を開発した。次年度はPEG培地での検定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目①のcDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析では、乾燥条件で発現誘導されるcDNAを導入したシロイヌナズナの浸透圧耐性を検定した。これについては耐性の向上は認められなかったが、計画通りに実施できた。他の11種の乾燥応答性のcDNAについては、塩基配列の解析から偽遺伝子等と考えられるため導入は行わなかった。 研究項目②のヤトロファのメタボローム解析で、乾燥処理により根でプロリンが相対量として124倍に増加することを確認したが、定量的な解析を行ったところ、10倍程度の乾燥応答的な蓄積を確認した。また、同様に乾燥処理で含有量が増加するラフィノースの合成に関与する3種の遺伝子を導入したシロイヌナズナの浸透圧耐性検定を行った。これまでのところ、ヤトロファ遺伝子を導入した組換え体で浸透圧耐性の向上は認められていないが、引き続き他の遺伝子も導入中であり、それらの解析結果に期待したい。また、浸透圧耐性検定の方法の見直しも行っており、より正確な耐性の検出が可能になると考えられる。 以上のように、各研究項目の進度としては計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
研究項目①のcDNAサブトラクション法によって同定した乾燥応答性のcDNAの機能解析は、タンパク質をコードしていると考えられる遺伝子の導入と解析は行ったため終了とする。 研究項目②のヤトロファのメタボローム解析では、プロリンと同様にラフィノースの定量を行う必要があるため、ラフィノースの定量系を確立して絶対量を測定する。また、既に解析した3種の遺伝子とは異なるラフィノース合成に関与する遺伝子、およびプロリンの合成に関与するヤトロファの遺伝子を導入したシロイヌナズナを作出中であり、これらの組換え体の浸透圧耐性検定を行う。検定には新たに開発したPEG含有培地を用いる。また、H25年度に検定した組換え植物中で、各導入遺伝子が正しく機能しているかどうかの解析を行う。余裕があれば、ラフィノースとプロリン以外の乾燥応答性代謝物の生合成に関与する遺伝子もヤトロファからクローニングして機能解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は\2,276であり、ほぼ計画通りの予算執行である。 H26年度使用計画 物品費:402,276、旅費:\250,000、謝金:\600,000、その他:50,000
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