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2013 年度 実施状況報告書

ゲノム情報を書き換えてストレスに対抗する植物のしくみの解明

研究課題

研究課題/領域番号 24580016
研究機関独立行政法人農業生物資源研究所

研究代表者

土生 芳樹  独立行政法人農業生物資源研究所, ゲノム機能改変研究ユニット, 研究員 (80266915)

キーワードイネ / トランスポゾン / エピゲノム / 環境ストレス
研究概要

イネ日本晴系統で確立したDDM1遺伝子ノックダウン系統を数世代に亘って自殖させ、ゲノムワイドな低メチル化状態を安定に維持する系統を確立した。この系統を用いて次世代シーケンサーによるInDel解析を行い、DaiZ10と呼ばれるhAT型トランスポゾンの脱離を検出した。DaiZ10はイネの形質転換法で用いるカルス形成の過程で活性化されていることが示された。また、植物体(幼苗)の一過的な熱ショックでもDaiZ10の弱い活性化が検出された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

DaiZ10は、5’端に近い転移酵素遺伝子プロモーター領域が野生型で高度にメチル化されているが、低メチル化系統では、この領域のほとんどすべてのメチル化が消失していることが明らかになった。一方で、3‘端の転移酵素遺伝子下流領域では、低メチル化系統においてもメチル化の低下は見られず、これらの結果から(1)DaiZ10の活性化状態と転移酵素遺伝子プロモーター領域のメチル化状態に相関があること、(2)DDM1はDaiZ10の特定領域のメチル化維持に関与していることが明らかになった。
イネの挿入変異の原因因子として広く利用されているレトロトランスポゾンTos17は長期間のカルス培養で活性化されることが知られているが、DaiZ10の活性化はカルス誘導後1週目で観察され、Tos17よりもカルス誘導過程の早い時期で活性化されていることが示された。また、カルスから再分化させた植物体においてもDaiZ10は活性が状態を維持していることが確認された。DaiZ10と99%以上の相同性を示すDaiZ型トランスポゾンは日本晴ゲノム中の4か所に存在するが、(1)低メチル化系統ではこれらの全てが活性化されていること、(2)野生型カルスではこれらのうち少なくとも2か所で活性化が見られることが明らかになった。
カサラスのゲノムにも日本晴におけるDaiZ10に相当するトランスポゾンが存在し、やはりカルス化で活性化されることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

カルス誘導過程で活性化されるDaiZ10については、カルス誘導から植物体再分化の期間を通してのメチル化状態の活性化の経時変化を解析する。DaiZ10の活性化を誘導する環境ストレス条件の更なる検討を進めるとともに、エピゲノム維持に関わるDDM1以外の因子の機能欠損系統におけるDaiZ10の活性化の有無を解析する。カサラスにおいてもカルス化によるDaiZ10様トランスポゾンの活性化が見られたことから、他のインディカ系統におけるDaiZ10様トランスポゾンの存在と活性化条件を解析し、インディカ系統におけるトランスポゾン挿入変異系統群確立への利用の可能性を見積もる。

次年度の研究費の使用計画

投稿していた論文が受理されず、再投稿が次年度に持ち越されたため。
当初計画に従い、消耗品購入、学会発表・情報収集のための国内外出張等に研究費を使用する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] RICE SALT SENSITIVE3 forms a ternary complex with JAZ and class-C bHLH factors and regulates jasmonate-induced gene expression and root cell elongation2013

    • 著者名/発表者名
      Toda Y, Tanaka M, Ogawa D, Kurata K, Kurotani K, Habu Y, Ando T, Sugimoto K, Mitsuda N, Katoh E, Abe K, Miyao A, Hirochika H, Hattori T, Takeda S
    • 雑誌名

      The Plant Cell

      巻: 25 ページ: 1709-1725

    • DOI

      10.1105/tpc.113.112052

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Locus-specific requirements of DDR complexes for gene-body methylation of TAS genes in Arabidopsis thaliana2013

    • 著者名/発表者名
      Kanno T, Yoshikawa M, Habu Y
    • 雑誌名

      Plant Molecular Biology Reporter

      巻: 31 ページ: 1048-1052

    • DOI

      10.1007/s11105-012-0554-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] エピミュータジェネシスと次世代育種への展開2013

    • 著者名/発表者名
      前川雅彦, 金澤章, 堤伸浩, 木下哲, 土生芳樹, 柴博史, 江面浩
    • 雑誌名

      育種学研究

      巻: 15 ページ: 42-50

  • [学会発表] イネ低メチル化系統における活性トランスポゾンの探索

    • 著者名/発表者名
      沼寿隆, 山口勝司, 重信秀治, 土生芳樹
    • 学会等名
      日本育種学会
    • 発表場所
      鹿児島
  • [学会発表] Genome-wide methylation profile of DECREASE IN DNA METHYLATION1 (DDM1) knockdown in rice

    • 著者名/発表者名
      Habu Y, Numa H, Yamaguchi K, Shigenobu S
    • 学会等名
      11th International Symposium on Rice Functional Genomics
    • 発表場所
      ニューデリー
  • [学会発表] シロイヌナズナにおけるRNA scilencingを介した遺伝子発現抑制機構の解析

    • 著者名/発表者名
      菅野達夫, 吉川学, 土生芳樹
    • 学会等名
      第36回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome-wide methylation profile of DECREASE IN DNA METHYLATION1 (DDM1) knockdown in rice

    • 著者名/発表者名
      Habu Y
    • 学会等名
      Translational Cereal Genomics
    • 発表場所
      ウイーン
  • [学会発表] A rice DDM1-deficient line: similarities and differences with ddm1 in Arabidopsis thaliana

    • 著者名/発表者名
      Numa H, Yamaguchi K, Shigenobu S, Habu Y
    • 学会等名
      第55回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      富山
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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