イネ科植物で知られているリン酸トランスポーター遺伝子のDNA配列を比較して設計したサブファミリーI特異的プライマーを用い、オオムギやコムギの菌根におけるサブファミリーIリン酸トランスポーター遺伝子断片を得た。次いで5'-RACEと3'-RACEにより、オオムギ菌根から1分子種、コムギ菌根から3分子種の新規な完全長リン酸トランスポーター遺伝子cDNAを得た。 それらの新規な遺伝子発現状況をRT-PCRによって調べた。その結果、意外なことに、菌根菌感染によって生育抑圧を受けるムギ類においても、これらの遺伝子は(著しく生育促進されるソルガムのサブファミリーIリン酸トランスポーター遺伝子に匹敵するレベルで)高発現することが判明した。したがって、ムギ類における生育抑圧の原因はこれらの遺伝子の転写以降にあると思われた。 今後は、リン酸トランスポータータンパク質レベルの確認やリン酸輸送活性の確認等を通じて、菌根菌によるムギ類の生育抑圧機構に迫りたい。
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