研究課題/領域番号 |
24580020
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
畑 信吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40238001)
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キーワード | アーバスキュラー菌根菌 / イネ科作物 / 生育応答 / リン酸トランスポーター |
研究概要 |
昨年度単離・発現解析に成功した菌根誘導型リン酸トランスポーター遺伝子(オオムギ1分子種、コムギ3分子種、ソルガム3分子種)のタンパク質産物を、高親和性リン酸トランスポーターを欠損した酵母変異株PAM2で発現させ、32Piの菌体への取り込みを定量することで植物リン酸トランスポーター活性の測定を試みた。しかし、有意な32Pi取り込みが検出されなかった。以前に論文発表しポジティブコントロールとして発現させたダイズリン酸トランスポーター(Tamura et al. (2012) BBB 76: 309-313)を用いても活性が見られなかったので、いつの間にかPAM2株の性状が変化したと推察された。グリセロールストックから新たなコロニーを起こしたが同じくネガティブな結果を得たので、トランスポータータンパク質の性状解析を行う試みは中断した。 アーバスキュラー菌根菌は好気性であるため水田転換畑に存在する胞子の数が非常に少ないのではないかと予想していたが、春先に転換畑から採取したカズノコグサ(Beckmannia syzigache)の根に菌根菌が感染していることを見出した。あらかじめ菌根菌(Glomus mosseae)を接種したイネ苗と非接種のイネ苗をその水田転換畑に移植して収穫まで栽培したところ、非接種イネでもあらかじめ接種したイネの約半分の感染率があった。すなわち、イネを水田転換畑で栽培しても土着の菌根菌がある程度感染することが示された。以上の結果は「イネを冠水栽培すれば菌根菌の感染率が低下するが絶滅するわけではない」というイタリアの研究グループによる最近の報告内容(Vallino et al. (2014) Plant Cell Env. 37: 557-572)に合致するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リン酸トランスポーターの活性測定に用いる予定だった酵母変異株の性状が変化したのは誤算であった。 予想に反して水田転換畑においても土着の菌根菌感染がある程度見られることが明らかになった。しかし、あらかじめ接種したイネではその倍の感染率があり、イネ系統によって生育応答に差があるとの予備的な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
菌根菌がイネの生育や収量におよぼす影響におけるイネ系統間差を明らかにし、その機構を考察して論文発表につなげる。
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