研究課題
炭酸固定を担うRubiscoの小サブユニット遺伝子はイネにおいて5つある.そのうちOsRbcS1は他の4つとアミノ酸配列が大きく異なり,光合成器官の葉身で発現しないことがわかった.OsRbcS1は葉鞘の基部の維管束周辺や葯などで発現しており,実際にRubisco大サブユニットと会合して機能的なRubiscoを形成していた.このOsRbcS1を通常発現していない葉身で高発現する形質転換イネを作出したところ,Rubiscoの触媒速度,CO2に対するミカエリス定数が増加した.このようなOsRbcS1が組込まれたRubiscoの酵素特性は,今後の高CO2環境で有利と考えられることからイネの光合成能力の改良に有効である.しかし,OsRbcS1高発現形質転換イネの光合成は高CO2条件でも増加しなかった.高CO2条件ではRubiscoが過剰となるので,Rubisco含量を適度に減少させる必要があると考えられた.そこで,ソルガムRbcS高発現イネで発現するイネRbcSをRNAiでノックダウンすることを試みた.多数の2重形質転換イネが得られ,現在ホモ系統の選抜を行っている.OsRbcS1の代謝的な機能を明らかにするために,OsRbcS1のRNAiノックダウン形質転換イネの作出を行った.OsRbcS1のノックダウンはイネの生育,光合成,メタボロームに大きな効果は及ぼさなかった.これらの結果,OsRbcS1働きは生育や光合成に影響を及ぼすほど多きくはないことが示唆された.ゲノムデータベースを探索すると様々な植物がOsRbcS1様の遺伝子を持つことがわかった.トマト,ミヤコグサにおいてOsRbcS1様遺伝子の発現解析を行ったところ,未熟な果実や花器官において発現が強く,葉では発現していないことが分かった.
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