研究課題/領域番号 |
24580023
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 教授 (30182447)
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キーワード | ダイズ / 植物生育促進根圏細菌 / 湿害 / 根の活性 |
研究概要 |
本研究はダイズの生育初期に根の伸張を促進させる方策として、根圏微生物のIAA生産能に着目し、有用根圏細菌を探索して利用することを目的としている。前年度はポット栽培したダイズの根圏細菌の単離を試みたが、有用な細菌を見つけることが出来なかった。 そこで、平成25年度は圃場条件下で生育させた幼植物に対し、一週間常時湛水状態とした個体を根圏細菌採取対象とした。用いた品種はサチユタカで、調査対象の25個体について、湿害程度が軽微な3個体の主根根圏より細菌を単離した。これらのIAA生産能をサルコフスキー反応による比色定量法を用いて行い、吸光度が選抜基準値の0.3以上のものをIAA生産能の高い微生物と判断した。その後、ダイズ種子に菌株を塗布し無菌条件下の寒天培地で栽培ができる簡易根長測定法を用いて、ダイズ根の生長促進効果を検討した。 ダイズ根圏から単離した195菌株のIAA生産能は、29菌株が選抜基準値以上の値を示した。これら29菌株について、簡易根長測定法で根長促進効果を確認したところ、29菌株平均で6.9%伸長した。無処理区の平均値以上であったものは11菌株あり、そのうち菌番号97を塗布した時の根長は無処理区より35%増大し、5%水準で有意な差が認められた。 根の伸長促進には、根長の他に根の太さの増大も重要な要素であるが、根の太さの増大率は29菌株平均で1.9%にとどまった。しかし、菌番号193が平均16.5%の増大を示した。この菌株は根長でも平均31%増大しており、ダイズ根の生長を促進する有益な微生物と判断した。 これら2菌株は菌番号97がMicrobacterium属、菌番号193がCronobacter属の細菌と同定され、次年度に圃場条件下でのダイズ栽培に適用し実用化を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度、嫌気条件下で生育するダイズ根圏から有用細菌を得るためにスクリーニングを行うこととしていたが、残念ながら、今年度は十分なIAA生産能を有する細菌を見つけることは出来なかった。ポットでの栽培では、根域が制限されること、ポットに土壌を充填するために十分な乾燥処理を施したことなど圃場条件とは異なる環境とならざるを得ない。このことが、土壌微生物の動態に影響したことも十分考えられた。そこで、平成25年度は圃場栽培した根を対象に有用細菌の単離を試みたところ、全分離菌株のうち、15%の菌株が、当方が設定した選抜基準以上のIAA生産能を示した。これらについて、2次スクリーニングとして、当方が確立した実際に菌をダイズ種子に塗布して根長促進効果を検定したところ、無処理区より35%増大する細菌を見つけることができた。さらに、根長以外の要因である根を太くする細菌も1菌株みつかった。これらの菌は同定済みであり、当初の目的とする有用根圏細菌を見いだすことが出来たことより、「おおむね順調に進展している」と自己判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実施したスクリーニング法で有用であろうと認めた2種の有用細菌に加えて、種子に塗布することで根の伸長に効果があるとされる市販物を用いて、ダイズ種子に有用細菌を塗布して圃場で栽培し、細菌が根の形態や機能に及ぼす影響を検討する。具体的方法としては、(1)有用細菌を種子に塗布し、窒素施用量と土壌水分を変えた圃場に播種して生育させる、(2)各時期に、光合成をフロロフィル蛍光測定装置(本科研で購入済み)で、根の活力を茎基部からの出液速度で測定する、(3))測定終了後、根を堀り上げ、一定面積に伸長する根量、根長などの形態的形質を調査する、などを実施する。 以上の結果を総合して、根圏微生物塗布による湿害回避が可能かどうかを判断し、本研究課題を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に必要なものはすべて購入し、実験も一区切りついていたため、1000円以下の残金であるので、次年度に繰り越すことが妥当と判断した。 平成25年度の残はわずかであるので、平成26年度の物品費として計上した1150千円とともに、ガラス器具や化学試薬および農業資材等を購入する予定である。
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