昨年度(2013年)に圃場栽培のダイズ根圏からIAA生産能の高いものを単離、選抜した細菌であるMicrobacterium azadirachtae(以下菌97)とCronobacter sakazakii(以下菌193)を用いた。菌97は根長促進効果、菌193は根の太さの増大に効果があることを確認している。この2つの菌について、吸光度OD660=0.5になるまで希釈して菌懸濁液を作成し、これを播種直前にダイズ種子に塗布(5分間浸漬)した。また、初期成育が安定する効果があるとされる市販の微生物発酵有機物溶液(以下有機物)も種子塗布する区を設け、対照は蒸留水とした。 供試ダイズ品種は、エンレイとサチユタカを用いた。元肥は施用せず、上記処理をした両品種を栽植密度7.9株/㎡で播種し、間引き後1穴1個体とした(3反復)。播種後28日、結莢期および収穫期に各区より1株ずつ根を掘り上げ、器官別乾物重と葉面積を測定した。収穫期には中庸な2株について収量および収量構成要素を調査した。 菌193と菌97の出芽率は両品種とも対照よりも高く、菌株塗布は出芽率に悪影響は与えないことが確認された。 菌97の平均収量は対照に比べて、エンレイで46%、サチユタカで16%の増収となった。菌97による増収の要因は、サチユタカでは百粒重が増加、エンレイでは莢当たり粒数が増加したためと推察された。一方、菌193の収量は対照よりもエンレイで20%、サチユタカで5%の減収となった。菌193の個体は収穫期の地上部重/根重比が大きく、根重が小であった。 以上より、菌97については根への伸長効果は明確ではないが、種子塗布という簡単な処理で、ダイズの収量を向上させる効果があることが明らかとなった。
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