研究課題/領域番号 |
24580027
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
平野 達也 名城大学, 農学部, 准教授 (30319313)
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キーワード | イネ / デンプン分解 / 葉鞘 / β-アミラーゼ / α-アミラーゼ |
研究概要 |
イネ穎果の登熟には,出穂期までに稈や葉鞘に蓄積されたデンプンなどの非構造性炭水化物が一部利用されるため,本研究課題では出穂期以降の葉鞘におけるデンプン分解に関わる遺伝子の機能解析を進めている.昨年度までに,β-アミラーゼをコードする遺伝子であるOsBAM2とOsBAM3のノックダウン系統を作出し,その表現型を解析してきた.その結果,OsBAM2とOsBAM3それぞれの単独のノックダウン系統では,出穂期以降の葉鞘におけるデンプン蓄積量に関して野生型と大きな差がないことが明らかになった.そこで今年度はOsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を作出するためのベクターを構築し,それを用いてOsBAM2&3ノックダウン系統の作出を進め,両遺伝子が効果的に発現抑制された系統を得ることができた.現在はその系統を閉鎖系グロースチャンバーで栽培し,表現型の解析を進めている.また,OsBAM2とOsBAM3のプロモーター:GUS発現ベクターを導入した形質転換イネにおいて,OsBAM2とOsBAM3遺伝子発現の組織特異性を調査した,OsBAM2プロモーターの発現は葉鞘や葉身などの柔組織などで確認されたが,一方OsBAM3プロモーターは維管束鞘細胞で特に強く発現していた. インド型多収イネ品種のタカナリと日本型品種の日本晴の葉鞘において,デンプン分解関連酵素遺伝子の転写レベルを出穂期前から登熟期にかけて経時的に解析した結果,α-アミラーゼをコードするRAmy2A遺伝子の発現がタカナリの葉鞘において出穂後のデンプン含量が低下する時期に急激に増加することがわかった.そこで,RAmy2Aのノックダウン系統の作出を,日本型品種の日本晴とササニシキに加えて,タカナリなどのインド型品種においても進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,平成25年度までに,OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を用いて,両遺伝子の発現抑制がイネ葉鞘の出穂期以降のデンプン代謝に及ぼす影響を明らかにすることを目標としていた.現在までにOsBAM2とOsBAM3ダブルノックダウン系統の作出は終了しているが,まだ表現型の解析を進めているところである.よって,この点では当初の計画よりも若干遅れていることとなる.しかし,平成26年度に進める予定であったRAmy2A遺伝子のノックダウン系統の作出と,それを用いた解析を先んじて進めていることから,研究計画全体としてはおおむね順調に進んでいるといえる.また,日本型品種とインド型品種間でのデンプン分解関連酵素遺伝子の作用の違いについては当初の計画通りに進めており,本年度はインド型品種におけるノックダウン系統も利用して,解析を進めることができると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度の平成26年度では,OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を用いた解析を進めることにより,出穂期以降のイネ葉鞘におけるβ-アミラーゼ遺伝子,OsBAM2とOsBAM3の機能について明らかにする.また,OsBAM2とOsBAM3のプロモーター:GUS発現ベクターを用いた植物体において,OsBAM2とOsBAM3発現の組織特異性についてさらに詳細に解析する.また,OsBAM5ならびにOsBAM9の2つのβ-アミラーゼ遺伝子の発現が出穂期以降の葉鞘において増加する傾向にあることから,それらの遺伝子のノックダウン系統の作出も進めていくと同時に,OsBAM5とOsBAM9のGFP融合タンパク質発現ベクターを構築し,タマネギ表皮細胞における一過性発現系によりOsBAM5とOsBAM9の細胞内局在性を明らかにする. α-アミラーゼをコードするRAmy2A遺伝子のノックダウン系統を,日本型品種の日本晴・ササニシキに加えて,インド型品種のタカナリとカサラスにおいても作出している.そこで本年度は,それら系統を育成し,RAmy2A遺伝子の転写レベルが抑制された系統を選抜し,その表現型の解析を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末の消耗品の執行が次年度支払となったため 次年度使用分となった8183円は,研究計画の遂行に必要な物品費(消耗品費)として,平成26年度当初に適切に使用する予定である.
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