研究課題/領域番号 |
24580028
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
牛木 純 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・水田作研究領域, 主任研究員 (40307682)
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研究分担者 |
林 怜史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・水田作研究領域, 研究員 (20508262)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水稲乾田直播栽培 / 省力化 / 経営規模拡大 / 越冬性 / 休眠性 / 軽労化 / 寒地稲作 / 初冬播き |
研究概要 |
以下をの内容を「北海道における水稲種子越冬性の品種間差」の題名で、日本育種学会第122回講演会(2012年9月)において発表した。 北海道の水稲栽培品種(大地の星、たちじょうぶ、他計7品種)を沖縄県石垣市において栽培した。各品種は2012年6月11日に採種し、休眠性評価はシャーレ内で30℃、湿潤条件下(無処理種子区)および、25℃での乾燥(約1週間)および50℃での休眠打破処理(約1週間)後、上記と同様の条件下で発芽試験を行った(休眠打破種子区)。 北海道の栽培品種「大地の星」、北海道の在来系統「冬越し」を用いて圃場条件下(札幌市)での越冬性試験を行った。「大地の星」については、播種時期を2011年10月14日~31日の3時期に播種を行った。播種は採土管内に種子と土壌を充填し埋設した。また、同日に上記に準じた休眠打破を行った種子(休眠打破種子区)と行わない種子(無処理種子区)を深度10cmに播種した。「冬越し」については、上記と同様に休眠打破種子区、無処理区を設定した。翌春2012年4月に種子を回収し、上記と同様の発芽試験を行った。 {実験1:北海道の水稲栽培品種の休眠性評価}上記の条件下で休眠性を評価したところ、休眠打破種子区では85~99%の種子は概ね1週間以内に発芽したが、「たちじょうぶ」のみは、1ヶ月後においても59±8%の発芽率であった。一方、無処理区の種子は約50日後においても43~70%であり、「たちじょうぶ」のみは29±8%の発芽率であった。{実験2:北海道の水稲栽培品種・系統の越冬性評価}「大地の星」を用いた試験では、播種時期、播種深度、休眠打破の有無にかかわらず、越冬した種子の翌春回収時の死滅率は97~100%であった。一方「冬越し」の翌春回収時の死滅率は無処理区81±15%、休眠打破種子区で88±3%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで北海道のような寒地で水稲を前年初冬に播種した場合の越冬性についてはほとんど知見がなかったが、本試験により在来系統「冬越し」に若干の越冬性があること、またその能力は休眠性に関係していることが明らかになった。2012~2013年にかけて現在再現性を確認している。また、北海道の主要品種には休眠性が無いとされてきたが、石垣島という異なる栽培条件では、登熟直後は明確な休眠性が認められた。これにより栽培時の温度等の条件が、休眠性に関係するというこれまでの知見が再確認できた。 現在、越冬時の環境に類似するアッセイ方法を検討中であり、土壌水分が越冬性に強く影響する可能性が明らかになりつつある。休眠性については、-20度以下の保存で採取直後の休眠性を長期保存できることが確認され、実験材料の調達も容易となった。また、イネの休眠性に関わるこれまで生理的、代謝産物的、遺伝的知見を文献整理し、材料とアッセイ方法が確立すれば、それらの解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実際の圃場条件下での越冬性の品種間差については、今後も継続的に実施し、最終年には現在の苗立ち数に匹敵できる、品種および播種条件を模索する。室内試験においては、異なる品種、休眠打破の有無、種子消毒剤の有無、異なる土壌水分、異なる温度条件を組み合わせて、インキュベーターによって越冬時の種子への負荷を再現できる簡便なアッセイ系を確立する。これらから越冬性に有利な環境要因や種子条件を、繰り返し実験することによって明らかにすることができる。現在、最も有望な北海道在来系統である「冬越し」については「日本晴」との交配を行い、近日中にF2まで採取できる。これらの材料から、遺伝解析、あるいはメタボローム解析を行うべく、有識者と意見交換を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
圃場試験および室内試験の補助要員の人件費に使用する。高額な物品としては、越冬性に関わる環境要因(温度、水分等)をモニタリングするためのデータロガーとプローブの購入費用に充てる。遺伝解析、メタボローム解析を行うに当たり、消耗品(試薬、実験器具等)の購入に充てる。得られたデータの学会発表のための旅費に充てる。これまでの結果をまとめ英文誌に投稿するための費用および英文校閲料にあてる。なお、次年度使用額21,555円は研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費とあわせて研究計画遂行のために使用する。
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