研究課題
【目的】 本課題では、圃場環境操作実験で栽培されたイネを対象に、核磁気共鳴(NMR) 法による代謝物の網羅的解析(メタボローム解析)を行い、CO2 濃度の上昇や温暖化といった気候変化が、イネの代謝プロファイルにおよぼす影響とその品種間差異を調べることを目的とした。【方法および結果】開放系圃場(つくばみらい市)において、CO2 濃度を増加させたFACE 区(CO2濃度約590 ppm)と対照区(CO2濃度約390 ppm)のそれぞれについて、温暖化を想定し水温を周辺と比べて2℃上げた加温区、さらに施肥の効果を検討するための低窒素区を設け、コシヒカリおよびタカナリについて、栄養生長期、穂揃い期および登熟期の3点でサンプリングを行った。栄養生長期の上位2葉、穂揃期および登熟期の小穂と止め葉について、1H-NMRスペクトルを計測し、主成分分析を行った。解析は、2012年採集試料を中心に行った。全スペクトルを使用した主成分分析では、環境条件の違いによるクラス形成は見られず、葉身、葉鞘、小穂といった部位の違いが最も大きく見られ、次いでサンプリング時期や、最上位展開葉(第I葉)と第II葉といった葉齢ごとのクラス形成が認められた。これらのクラス形成には糖類の寄与が大きく、次いで有機酸の寄与が見られた。前年度栄養生長期の試料では、まず対照区とFACE区でクラス形成する傾向が見られたため、イネの代謝に対するCO2濃度の影響は年度ごとに大きく異なることが示唆された。コシヒカリでは、栄養生長期の第II葉の葉身でFACE効果が見られた。低窒素区における代謝プロファイルの変化は穂揃期以降に現れ、穂揃期では止葉の葉鞘、登熟期では止葉の葉身および葉鞘、小穂の全てにおいて施肥による代謝への影響が認められた。タカナリはコシヒカリよりも環境変化による代謝への影響が小さく、穂揃期の止葉においてわずかにFACE効果が見られた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Food Chemistry
巻: 174 ページ: 163-172
10.1016/j.foodchem.2014.11.028
Microbes and Environments
巻: 30 ページ: 51-62
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