研究課題
近年、米の生産において、登熟時の高温による白未熟粒の発生が問題になっている。高温登熟に強い品種育成のため、高温耐性に関与する遺伝子座を解明する必要があり、ハバタキ・ササニシキ染色体断片置換系統を用いて高温耐性のQTLの探索を行った。昨年までに、高温耐性を持つQTLを第3染色体の遺伝子6個程度まで絞り込んでおり、本年度は、その発現解析を行った。その結果、そのうち2遺伝子は登熟中の粒で発現がみられず、実質4遺伝子にまで絞り込めた。また、このうちの1遺伝子は、ハバタキ型では高温処理により発現量が2倍以上に増加するが、ササニシキ型では高温で減少した。したがってこの遺伝子が原因遺伝子である可能性が高い。今後、候補遺伝子の発現抑制等により、原因遺伝子であることの証明を行う。期間全体を通しては、登熟時の気温の上昇幅が同じでも、ハバタキの白未熟粒の増加割合がササニシキより小さいことから、ハバタキが真の登熟期高温耐性を持っていることを明らかにし、この高温耐性QTLの座乗範囲を第3染色体の4遺伝子にまで絞り込んだ。これに加えて、このQTLの近傍に、胴割れ粒の発生を抑制することにより、整粒割合を増加させるQTLも見出した。この2つのQTLは、共にハバタキ型で整粒割合を増加させる方向に働き、間に悪影響を及ぼすQTLが無いため、これらのQTLを含む領域を導入することにより、ササニシキのような日本型のイネを、整粒割合を増加させる方向に改良可能となる。これらの経緯については、現在論文を投稿中である。また、この研究と並行して、同じ材料を用いて、コメのタンパク質含量に関するQTLを調べていたが、この原因遺伝子がイネの短稈遺伝子であるsd1であり、そのアリルの変化によりタンパク質含量が変化することを明らかにした。これについては、論文として発表を行った。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
PLOS ONE
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