研究課題/領域番号 |
24580033
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
石丸 健 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (80370641)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 生産性 / イネ / 葉鞘 |
研究概要 |
蓄積能を高める遺伝子座RG5はカサラスに由来し、出穂前の植物体における蓄積量を1.5倍に高める。RG5を有すコシヒカリ染色体置換系統(SLRG5)において、主に蓄積を担う葉鞘では蓄積能(デンプン含量)が2倍に増加していた。一枚の葉鞘内には機能分化が存在し、上部は葉身からの転流に関与し、下部が蓄積を担う。分化に伴い関与する酵素の遺伝子発現量や活性も大きく異なる。そのため蓄積量の増加の要因として2つの仮説(①蓄積部位の増加、②蓄積量の増加)が考えられた。本年度は仮説の検証とポジショナルクローニングに向けた準備を中心に研究を行った。 ・蓄積能を増加させる生理的要因 コシヒカリとSLRG5の葉鞘を5分割し各部位の蓄積量の測定を行った。その結果デンプン含量は各部位において増加していた。上部から基部にかけて下にいくほど蓄積量が増える傾向は変わらなかった。このことから、RG5による葉鞘全体で蓄積量が増加したのは、仮説①の機能分化に変化が生じ蓄積部位が増加したのではなく、仮説②の部位当たりの蓄積量の増加に起因することが明らかになった。 出穂前の植物体における主要な蓄積器官である葉鞘において、顆粒性デンプン合成酵素とブランチングエンザイムがデンプン合成の鍵酵素であり、転写レベルで活性が制御されている。分割した葉鞘を用いて、この2つの鍵酵素の発現量を比較した。その結果、蓄積量が2.2倍に増加した葉鞘基部においてどちらの遺伝子ともコシヒカリとSLRG5間に発現量に有意な差は見られなかった。他の部位においても同様の結果であった。これらの結果は、RG5による蓄積能の向上はデンプン合成能に因るのではなく、転流特性等の他の要因によることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RG5により葉鞘に含まれる炭水化物量の増加の要因として2つの仮説(①蓄積部位の増加、②体積当たりの蓄積量の増加)が考えられていた。本年度の研究を通して、RG5による蓄積量の増加は、蓄積器官のデンプン合成能に因るのではなく、転流特性等の他の要因によることを明らかにすることができた。この結果を基に、RG5による蓄積能の向上を引き起こす要因を明らかにするためには、転流特性及び下位葉の炭水化物供給特性を解析する必要が有ることを示すことができた。これらの解析に加え次年度以降のポジショナルクローニングに向けた準備も整った。研究は予定通り、進捗した。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度の解析により、RG5が炭水化物を多く蓄積させる要因が、炭水化物の供給元(下位葉)の能力もしくは転流効率等の蓄積能以外にあることが明らかになった。次年度はこの点を更に明らかにするために、下位葉の持つ特性を解析する。また、RG5の領域の矮小化に向けて、領域内で組換えが生じた系統を選抜し,フェノタイピングとジェノタイピングの結果から領域を絞り込む。 1. RG5の機能解析 RG5が炭水化物の供給元(下位葉)の能力や転流効率に及ぼす影響を明らかにするために、最も多く炭水化物を蓄積する止葉下第二葉(-2葉)の葉身の葉面積、比葉面積、窒素含量、老化速度や転流に関わるショ糖トランスポーター等の発現量を解析する。 2. RG5の領域の矮小化 候補領域の両端にDNAマーカを設定し、SLRG5にコシヒカリを戻し交配し得られた4,000個体の自殖後代系統(BC1F2)の中から領域内で組換えが生じた個体を選抜しその後代系統を得る。ジェノタイピングは、我々が開発し大量サンプルの解析に適したアリル特異的なSNPsタイピング方法を用いる。選抜した系統のフェノタイピングとジェノタイピングの結果から領域を絞り込む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ジェノタイピング試薬の購入800千円、非常勤職員の雇用500千円、糖分析試薬70千円、窒素分析試薬50千円
|