研究課題/領域番号 |
24580034
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森本 淳子 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50338208)
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研究分担者 |
小川 健太 酪農学園大学, 農学生命科学部, 准教授 (10533177)
三島 啓雄 国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 准特別研究員 (60534352)
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キーワード | 生態系サービス / 人工林 / 里山 / 風倒 / 再生 |
研究概要 |
本年度は、放置人工林の強風への脆弱性を評価するための基礎情報の整備、具体的には以下の3つを目標とした。 1.対象地の選定:道有林からデータベースを借り受けて、急傾斜地に立地する1000ha以上の人工林と天然林のなかでも、2004 年の台風19号で風倒が発生した森林を抽出した。 2.倒壊地の抽出:2004年前後の空中写真を入手し、林冠の消失をもとに風倒地を判定しGIS上でポリゴンを作成をした。 3.風倒発生に関連した林分属性と環境情報の整理:対象地の林分属性(密度・形状比・広葉樹密度・林齢)を森林簿から抽出し、地形特性(標高・傾斜角・TPI)はDEMから計算した。 さらに、当初は目標に据えていなかったが、情報の整理ができた4人工林と1天然林のデータセットで、風倒発生特性をモデル化を試行した。その結果、風倒リスクは天然林よりも人工林においてより高いことが明らかになった。人工林・天然林ともに、風倒は斜面上の突出地形に立地する林分や広葉樹率の低い林分でより発生しやすかった。人工林では林齢が風倒の発生に強い正の影響を与えており、より高齢の林分でリスクが増大することが明らかになった。さらに、人工林における風倒リスクは天然林においてもリスクの高い場所でより大きく上昇することが明らかになり、減災を目的とした人工林の天然林への転換は、斜面上の突出部に立地する高齢林分でより効果的であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
道有林を対象に研究対象地の選定を行った結果、天然林については、条件に見合うサイトが1林分しかなかった。その点が、想定外であったが、ひとまず、人工林4林分、天然林1林分で、モデル作成を試行し、成功したので、来年度の本格的な解析に向けての準備が順調にできているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
道有林だけでなく、国有林も対象に、調査地の選定をおこない、天然林のサイトを新たに2~3林分増やし、モデルの精度を高める方向で進める。 また、もう一つの里山林における放置リスク評価についても、以下の手順で開始する。 ①既往研究より、道南(I)、道央(II)、道北(III)、道東(IV)の4地域における、古代ヒグマ(アイヌ期)と現代ヒグマ(90年代以降)の骨コラーゲンの同位体比値を整理する。 ②サンプルが採集された地点をGISで整理し、環境条件を明らかにする。 ③C4植物の食物割合を食性のヒト依存度とし、環境条件との対応を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度9月~平成25年度9月まで産休・育休を取得したため、予定していた研究内容が遂行できず、予定額を使い切ることができなかった。 H26年度より再開し、H25年度までに予定していた内容を遂行する。具体的には以下の2件になる。①倒壊しやすい地形的(斜面方位や傾斜)・生物的(林分の空間構造や周辺林分との類似性)条件が人工林と天然林でどのように異なるかを明らかにする。②北海道の森林生態系の上位種であるヒグマをとりあげ、道南(I)、道央(II)、道北(III)、道東(IV)の4地域において、古代ヒグマ(アイヌ期)と現代ヒグマ(90年代以降)の骨コラーゲンの同位体比値から、食性のヒト依存度を明らかにする。環境の人為改変の質(森林開発・河川改修)とヒグマのヒト依存度の関係をモデル化し、北海道で軋轢の生じやすい里山林を抽出する。
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