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2015 年度 実施状況報告書

放置リスク評価に基づく里山林・人工林からの撤退シナリオ

研究課題

研究課題/領域番号 24580034
研究機関北海道大学

研究代表者

森本 淳子  北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50338208)

研究分担者 小川 健太  酪農学園大学, 農学生命科学部, 准教授 (10533177)
三島 啓雄  国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 准特別研究員 (60534352)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2017-03-31
キーワード人工林 / 里山林 / 風倒 / 軋轢
研究実績の概要

・人工林におけるリスク評価とポテンシャル評価:人工林の風倒リスクモデルの改良を行うとともに、人工林の混交林化ポテンシャルの評価を行った。人工林の風倒リスクモデルはこれまでのロジスティック回帰モデルから、マシーンラーニングによる推定手法に改めることにより、データのばらつきや欠損値による影響を最小限に抑え、また、非線形パターンの抽出に成功した。風倒確率に影響を与えうる変数として、立木密度、広葉樹密度、樹高、傾斜角、地形露出度、最大風速を用意したが、いずれの変数の定義域に対しても、天然林より人工林で風倒確率が高いことが確認された。人工林の混交林化ポテンシャル評価は、49~73年生の高齢級トドマツ人工林における広葉樹稚樹の個体数調査により行った。林分の施業履歴・種子供給源・立地環境を説明変数として、GLM(一般化線形回帰モデル)による統計解析を行った結果、風散布型ではスギ・ヒノキ人工林と同様に周囲の天然林から近いほど稚樹個体数が多くなった。鳥散布型の稚樹は間伐からの年数が浅い林分で個体数が増加し、間伐によるギャップの形成が鳥類による散布を促進していると考えられた。

・里山林におけるリスク評価:ヒグマによる農作物被害を引き起こす要因を解明するため、北海道渡島半島地域を対象に、主要な被害農作物であるコーンの利用割合を、大腿骨の安定同位体比を用いた食性分析から推定した。メスのコーン利用については、個体情報や生息地環境との特徴的な関係が認められなかったが、オスについては、社会的に優位な体サイズの大きい個体が、森林に隣接した人気の少ない農地に出没して、多くのコーンを利用していることが明らかになった。これより、ヒグマの農作物利用形態は個体間で大きく異なり、農作物がヒグマの社会において重要な食物資源となっていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

人工林のリスク評価については、風況モデルの専門家と、マシーンラーニングの専門家の協力を得て、予定していた以上の成果を上げることができた。人工林の混交林化ポテンシャルの評価についても、他のプロジェクトの支援を得て十分なデータセットで解析が可能となり、予定していた成果を上げることができた。いっぽうで、混交林化ポテンシャルについては、地域差を考慮した考察が未だ不十分であり、来年度の課題としたい。
里山林におけるリスク評価については、「ヒグマのヒトへの依存度」を主要な被害農作物であるコーンで評価することとした。個体情報とコーン利用の割合の関係を解析することは比較的容易だったが、環境要因との関係を解析することは、生息域の特定ができないことから困難であった。解析手法には細かな課題を含むが、結果が示唆するものは非常に興味深い。来年度は、課題を解決していくなかで、具体的な撤退シナリオの提案を行いたい。

今後の研究の推進方策

来年度は最終年度となるため、これまでの成果を論文、学会等で発表していくことに重点をおきつつ、昨年度までにやり残した課題に取り組みたい。紙面発表としては、以下に取り組む。
・研究論文:人工林化が風倒撹乱への脆弱性に与える影響(執筆中、Can. J. For.へ投稿予定)、広葉樹稚樹の多い高齢級トドマツ人工林の解明(執筆中、日林試へ投稿予定)
、ヒグマ (Ursus arctos)の農作物利用における規定要因の解明-個体情報と生息地環境に着目して-(執筆中、投稿誌未定)
・データペーパー:風倒地ポリゴンの作成過程とその成果について(準備中、投稿誌未定)
研究課題としては、以下に取り組む。「風倒リスクと林業生産の効率性からみた人工林経営適地の抽出」および「ヒグマとヒトの軋轢発生空間のモデリング」

次年度使用額が生じた理由

2015年度は、風倒リスクモデル作成のための風倒地ポリゴンの作成方法の検討に時間を要した。それにともない、風倒地ポリゴン作成およびチェックにかかる人件費が想定より低く抑えられたため、予算を繰り越すこととなった。

次年度使用額の使用計画

2016年度に、本格的にポリゴン作成を実施する。また、風倒の発生を説明する変数として利用する環境データの整理費用およびデータペーパー執筆用の英文校閲費用等として利用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 北海道における森林の風倒評価:2004年台風18号による影響2016

    • 著者名/発表者名
      中川考介・森本淳子・古川泰人・髙野(竹中)宏平・饗庭正寛・小黒芳生・三島啓雄・小川健太・伊東瑠衣・竹見哲也
    • 雑誌名

      台風研究会「複合系台風災害のメカニズムに関する研究集会」

      巻: - ページ: 24-28

  • [雑誌論文] 北海道における森林の風倒予測:2004 年18 号台風の21 世紀末擬似温暖化実験2016

    • 著者名/発表者名
      髙野(竹中)宏平・饗庭正寛・小黒芳生・中川孝介・森本淳子・古川泰人・三島啓雄・小川健太・伊東瑠衣・竹見哲也
    • 雑誌名

      台風研究会「複合系台風災害のメカニズムに関する研究集会」

      巻: - ページ: 29-32

  • [学会発表] ヒグマ(Ursus arctos)の農作物利用における規定要因の解明~生息地環境と個体情報に着目して~2016

    • 著者名/発表者名
      崎山智樹, 森本淳子, 松林順, 古川泰人, 近藤麻実, 釣賀一二三, 間野勉
    • 学会等名
      日本生態学会第63回大会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-03-22
  • [学会発表] 台風被害前後の空中写真から作成した DSM の差分による森林風倒地の推定2016

    • 著者名/発表者名
      玉利 直樹・小川 健太、森本 淳子・中川 考介・三島 啓雄
    • 学会等名
      日本写真測量学会北海道支部第34回学術講演会
    • 発表場所
      かでる2・7(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-03-04
  • [学会発表] トドマツ高齢級人工林における天然林化の可能性2015

    • 著者名/発表者名
      小松玄季・森本淳子・明石信廣
    • 学会等名
      第64回北方森林学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2015-11-12
  • [学会発表] 北海道における森林の風倒評価:2004年18号台風の影響2015

    • 著者名/発表者名
      中川考介・森本淳子・古川泰人・三島啓雄・小川健太・饗庭正寛・小黒芳生・高野宏平・伊藤瑠衣・竹見哲也
    • 学会等名
      平成27年度京都大学防災研究所共同研究集会「台風研究会」
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] 北海道における森林の風倒予測:2004年18号台風の21世紀末擬似温暖化実験2015

    • 著者名/発表者名
      高野宏平・饗庭正寛・小黒芳生・中川孝介・森本淳子・古川泰人・三島啓雄・小川健太・伊東瑠衣・竹見哲也
    • 学会等名
      平成27年度京都大学防災研究所共同研究集会「台風研究会」
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-31
  • [学会発表] Developing windthrow risk model for plantation management strategy under climate change.2015

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Nakagawa, Junko Morimoto, Yoshio Mishima, Yashuto Furukawa1, Kenta Ogawa, Kohei Takano, Masahiro Aiba,Michio Oguro, Teshuya Takemi
    • 学会等名
      The 9th Annual International Association for Landscape Ecology World Congress
    • 発表場所
      Portland, Oregon
    • 年月日
      2015-07-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Impacts of salvage logging on water quality, carbon stocks, and vegetation recovery –some case studies in monsoonal Asia.2015

    • 著者名/発表者名
      Junko Morimoto, Keitaro Fukushima, Satoshi Suzuki
    • 学会等名
      Disturbance & Salvage Logging Symposium
    • 発表場所
      Rector, Pennsylvania
    • 年月日
      2015-05-31
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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