研究課題/領域番号 |
24580037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅和 筑波大学, 芸術系, 教授 (40216437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 福島県 / 岩瀬牧場 / 産業遺産 |
研究概要 |
本研究の当該年度においては、福島県須賀川市と鏡石町にまたがる日本初の西欧式官営牧場を前身とする岩瀬牧場の歴史的な経緯を明らかにし、地域における近代化産業遺産としての複合的な価値を再評価することを目的とした。そのため、公開されている文献および、牧場に残されていた資料、現経営者および前牧場長などからのヒアリングなどにより歴史的経緯をまとめた。さらに、牧場に現存するトウモロコシ貯蔵庫、牛舎、穀物倉の建築的実測調査を行った。また、場内に残されている巨木の毎木調査を行った。現在の岩瀬牧場に残されている資料・建築・景観の地域資源としての価値を考察し、その結果、岩瀬牧場の空間的価値は当時の構造物が現存している状況のみによるものではなく、生産技術の経年変化に伴うランドスケープ化にあり、加えて明治期における牧畜産業の技術、風景概念を海外から直接持ち込んだ「西洋化」の事例としての歴史的価値を有していることが明らかになった。 岩瀬牧場は東日本大震災により被災したが、歴史的建造物は被害がきわめて少なく、逆に近年整備された施設群は大きく損壊した。このことから、当牧場を地域における正統的な環境資源として捉え、震災復興を包含する将来の景観整備モデルとして取り上げる価値と意義を認めた。 以上の研究成果について2012年度の日本造園学会全国大会において発表した査読論文は日本造園学会よりベストペーパー賞を受賞し、日本造園学会関東支部大会におけるポスター発表はプレゼンテーション奨励賞を受賞した。 25年度の実践的課題として研究計画にあげていた、地元自治体や関連組織・団体の協力体制の確立については、申請者らの助力により「牧場の朝顕彰会」が設立され、一部前倒しの成果を得た。地元においてワークショップを開催し、牧場の価値に関する共通理解を得た。これらの経緯については地元新聞数紙で大きく取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度に予定していた産業遺産の利活用を目指した地元関連団体の組織化がすでに実現している。 一方、24年度に予定していた場内の建築物などに関する実測調査が一部完了していないため、文化財登録申請が未済であり、これを25年度研究計画に継続した。 以上総合的に勘案して、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度未済部分の、建築実測調査を継続し、文化財登録に向けて努力する。牧場に現存する農業機械などの資源を調査・整理・データベース化し、現在活用されていない板倉を、資料展示のためにリニューアルするデザイン提案を行う。 現有のフォードソン社製F型トラクターの現状を調査し、産業機械史的な価値の再評価を行い、保全修復に関する検討を行う。 昨年度設置された「牧場の朝顕彰会」を通じて、現地における牧場に関するシンポジウム・ワークショップ・花のイベント企画などを行い、地域復興の足がかりとする。 以上により「人・物・地域」のつながりによる震災復興と産業遺産デザインの実践的検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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