研究課題/領域番号 |
24580037
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅和 筑波大学, 芸術系, 教授 (40216437)
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キーワード | 福島県 / 岩瀬牧場 / 近代産業遺産 / 環境デザイン / 景観 / 地域活性化 / 観光 / 地域ブランド |
研究概要 |
本研究の目的は,福島県須賀川市と鏡石町にまたがる「岩瀬牧場」を近代産業遺産ととらえ,その歴史的意義を明らかにするとともに,現代的な活用方法を環境デザインの実践として提案するものである。昨年度は岩瀬牧場の歴史的な価値の再評価を行い,日本造園学会に査読論文として発表した。今年度は,対象を福島県の中南部として一回り大きな枠組みで考察し,同学会に査読論文として投稿中である。 環境デザイン的展開としては,(1)牧場所蔵文献資料のアーカイブ化,(2)古農具類・樹木群の形態情報の把握,(3)牧場内資源(歴史的建造物・古農具・トラクターなどの農業機械)の利用促進方策の検討,(4)Web ,展示発行物,パッケージ等のインフォメーションデザインの検討,(5)牧場景観活用計画の策定(土地利用マスタープラン図の作成)について,関連する岩瀬牧場(有限会社イワセファーム)経営者,支援団体,地元自治体などと協議しながら,検討を行った。その過程において,(1)敷地の土地利用が細かく分断され過ぎており,そのため管理区分が分散して非効率である,牧場の境界が景観的に不明確であり,東北本線鏡石駅をはじめとるす近隣施設のアプローチが活用されていない,ことが明確になった。また,(2)牧場景観の現況を解析した結果,利用度の低い施設・整備,景観を損なっている施設・設備の撤去が必要であり,また利用度は高いが改善が必要な施設・設備があり,さらに敷地を細分化・分断している要素として,生け垣とアスファルト舗装の一部が抽出された。加えて(3)牧場内における飲食空間と生産品の魅力が乏しく,ブランドとしてのイメージが不足していると考察された。これらの分析を受けて,(4)原有資源の有効利用,阻害施設と設備の撤去,周辺観光資源との連携・近隣地域融和が課題となった。これらの課題を受けて,具体的な土地利用マスタープランとデザイン提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学術的課題としては,日本造園学会に査読論文として1編発表しベストペーパー賞を受賞するなど,高く評価されつつある。さらに1編を投稿中である。また,日本デザイン学会にポスター発表を行い,牧場内に保存されている,工業遺産としてのフォードソン社製F型トラクターの意義について明らかにした。 デザイン的課題としては,土地利用マスタープラン図を作成し,岩瀬牧場経営当事者に採用されつつある。また,フォードソン社トラクターの修理作業をはじめつつある。これらが経営的に稼働し,社会的評価を受けるまでには至っていないが,確実に実現に向かっている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本申請の最終年度にあたるが,明治期より始まった東北開発がまだ途上であるという意識において,東北地方における震災復興プロジェクトの一つのモデルとなるべく研究を進めたい。そのためには,岩瀬牧場の歴史的意義に関する学術的解明をすすめる。さらに並行して,地域ブランドとして成立させるための環境デザインの具体的な展開を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
無理に不要な消耗品購入を行わず、次年度の研究活動に有効に活用するため。 1回の研究対象地往復に約1万5千円かかるため、旅費の一部として活用する予定である。
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