研究課題/領域番号 |
24580041
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
片岡 圭子 愛媛大学, 農学部, 准教授 (80204816)
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キーワード | トマト / 果実肥大 / 単為結果 / クライオミクロトーム / インベルターゼ / 低温耐性 |
研究概要 |
1.糖代謝酵素活性の組織化学的検出法の開発 未熟果実を用い,NBTによりインベルターゼ(INV)活性を検出しようとした.反応時間を延長すると胚珠と維管束,表皮だけを残してフィルム全体が発色した.緑熟期果実の酸性INV活性は中果皮で検出できたが,果実肥大初期では活性が低く検出できなかった.一方,脱色部位では,クロロナフトールを用いてPOXの活性を確認した. 2.‘Micro Tom’にpat-2を導入したpat2MT系統の作出 BC3F2世代78個体を栽培し,23個体が明瞭な単為結果性を示した.4個体をMicro Tomに戻し交雑して,BC4F1世代の種子を得た. 3.pat2MT系統における果実肥大の低温感応性の検討 BC3F2のうち,単為結果性および非単為結果性の各3系統を挿し木繁殖し,各株2果に制限し,開花後31日目から温度処理を開始した.温度処理は28℃/20℃および16℃/10℃の2処理区として,催色果の直径,新鮮重を測定し,色素,組織よび糖含量のサンプルを採取した.低温区では高温区に比較して,温度処理開始から催色までの日数は約2.4倍に,新鮮重は単為結果系統で1.3倍,非単為結果系統で1.7倍となった. 4.pat-2品種と非単為結果性品種との低温栽培下での肥大性の比較 単為結果性品種‘京てまり’,非単為結果性品種‘フルティカ’を供試し,開花後24日目から,無加温および加温区を設定して栽培した.着色時に収穫し,果実重,成熟日数を測定した.‘京てまり’では無加温区で成熟まで日数が6日長くなり,果実重は約2g重くなった.一方,‘フルティカ’では,ほとんど差が認められなかった.収穫までの積算温度を,基準温度以上の時間を積算した値とし,それぞれの品種で加温区と無加温区で積算値が同等になる基準温度を推定したところ,‘京てまり’では13℃,‘フルティカ’では10℃となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薄切切片での酵素活性検出が想定以上に困難で,予定通りに研究を進めることができなかった.予定していた低温栽培条件下での単為結果性品種と非単為結果性品種との比較に関しては,予定していた圃場が使用できなかったため,規模を縮小した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果では,圃場条件で行った‘京てまり’/‘フルティカ’での実験と,インキュベーターで行ったpat2MT/WTMTでの実験結果が果実肥大の点で異なっていた.これは,‘京てまり’の低温による肥大停止遅延が単為結果性に由来しない可能性を示している.今年度はこの点について明確にする. また,ペルオキシダーゼ活性が果皮で検出された.果実肥大後期の肥大停止が果皮のペルオキシダーゼ活性増大と関連しているという報告があることから,肥大後期の温度条件の影響について検討する. pat2MT系統のBC3F2およびBC4F2世代から数個体えらび,栄養繁殖して用い,緑熟後の低温遭遇が果実の発達に及ぼす影響を比較する.今年度の結果から,低温処理の昼温を高くした処理を設定し, 28/20,28/10,20/10℃(昼温/夜温,日長14時間)の3区を設定して開花後4週間目から温度処理を開始する.処理開始時,処理開始2週間後の果実について,組織切片を作製し,糖代謝酵素活性,ペルオキシダーゼ活性,細胞の大きさを測定する. ‘京てまり’および‘フルティカ’を用いて,ハウス圃場での冬季低温条件での果実肥大と成熟過程の温度依存性について整理し,得られた結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度の未使用額が25万円あり,当初計画での50万円に加えて実験機材の整備および旅費に使用したが,学会参加1回分相当の旅費が未使用となった. 実験資材および栽培資材の購入に約46万円を,学会発表旅費に約6万円,データ整理に関する謝金に2万円,論文の英文校閲に2万円を予定している.
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