研究課題/領域番号 |
24580043
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
板村 裕之 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (80109040)
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研究分担者 |
中務 明 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40304258)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 果実軟化 / エチレン誘導要因 / アクアポリン / 水酸化ラジカル / アスコルビン酸生成酵素 |
研究概要 |
急速な軟化機構の分子メカニズムの理解を進めるため、樹上軟化した‘西条’果実由来のcDNAライブラリーを作成し、EST情報を解析し、4701のEST情報を得ることに成功した(アクセッション番号 FY982194–FY986894)。そのうち細胞壁分解酵素遺伝子の相同性検索の結果、各酵素に関して2種以上のアイソザイムが存在していることが示唆された。さらにペクチン分解酵素遺伝子Dk-PGとDk-PMEについては、エチレン依存型のPG遺伝子が果実軟化に主に関与していることが明らかとなった。 アクアポリン遺伝子DkAQP1と DkAQP2の発現解析の結果、DkAQP1が‘西条’の樹上軟化と関連が深いことが明らかとなった。また、マイクロアレイ解析の結果アスコルビン酸の代謝系の最終段階の酵素であるL-galactonolactone dehydrogenase の発現量が樹上軟化しやすい系統で低いことより、アスコルビン酸の軟化に関与する可能性が示唆された。 さらに、‘守屋’幼果を用いたESR測定の結果より、軟化に伴って果肉中に・OHラジカルの発生が認められた。 以上の結果から、カキ果実の軟化にはエチレン生成が必須なことはもとより、エチレン生成を誘導する要因として、アクアポリンを介した水ストレスと、アスコルビン酸による還元能の低下、・OHラジカルの発生などが関与することが示唆された。さらに、それらの要因によって発生したエチレンによって誘導されたDk-PG1が果実軟化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、マイクロアレイ解析の結果から示唆される、果実軟化の引き金としてのエチレンを誘導する前兆の現象を支配する発現遺伝子候補を特定し、エチレン生成を誘導するメカニズムを解明しようとするものである。平成24年度は、このうちアクアポリン遺伝子発現を解析するとともに、マイクロアレイ結果を解析し、アスコルビン酸の代謝系の最終段階の酵素であるL-galactonolactone dehydrogenase の発現量が樹上軟化しやすい系統で低いことをみいだした。さらに、ESRを用いた測定でエチレン生成誘導時に・OHラジカルが発生することをみいだした。これらの成果からおおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マスタープランにあるように、アクアポリン、アスコルビン酸関連酵素、細胞壁分解酵素、エクステンシン関連遺伝子について発現解析を行う。さらに、マスタープランにはないものの、シグナル要素としてのラジカルについてもESRなどで測定解析を進める。また、細胞膜の劣化に関連するリポキシゲナーゼについても解析を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子解析用の試薬などの消耗品並びに成果発表のための旅費に適正に支出する予定である。
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