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2013 年度 実施状況報告書

カキ果実の軟化およびエチレン生成誘導要因の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24580043
研究機関島根大学

研究代表者

板村 裕之  島根大学, 生物資源科学部, 教授 (80109040)

研究分担者 中務 明  島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (40304258)
キーワードカキ / エチレン生成誘導 / リポキシゲナーゼ / アクアポリン / 細胞壁分解酵素 / 遺伝子発現
研究概要

DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析により、カキ‘西条’のエチレン生成を誘導しやすい系統では、脂質の過酸化に関与するリポキシゲナーゼの発現量が多いことを見出している。そこで、ドライアイス脱渋処理果を用いて、還元型アスコルビン酸の減少および細胞膜の脂質過酸化や電解質の漏出量を指標とした細胞膜の劣化と、カキ果実のエチレン生成誘導との関連を調査した。その結果、エチレン生成誘導に先立ち、還元型アスコルビン酸の急速な減少と、脂質の過酸化、電解質の漏出量の増加が起こった。これらのことから、ドライアイス脱渋処理によるストレスによって、抗酸化物質であるアスコルビン酸含量の減少とともに、細胞膜の酸化が起こり、膜の機能が低下することで、エチレン生成が誘導されるものと思われた。なお、エチレン生成誘導前に活性酸素種である・OHの発生は認められなかった。
さらに、昨年度解析したカキ‘西条’2系統を用いてアクアポリン遺伝子を反復解析した結果、DkAQP1がエチレン生成誘導量の大きい系統で高く発現していることを再確認した。
あわせて、エチレンに依存する急速な軟化機構の分子メカニズムの理解を進めるため、樹上軟化した‘西条’果実由来のcDNAライブラリーから、4701のEST情報を得ることに成功した(アクセッション番号 FY982194–FY986894)。そのうち細胞壁分解酵素遺伝子はポリガラクチュロナーゼ;PG・ペクチンメチルエステラーゼ;PME・β-Dガラクトシダーゼ・α-Lアラビノフラノシダーゼ・エクスパンシンなどが含まれていた。さらにペクチン分解酵素遺伝子について発現解析を行うと、DkPG1,DkPG2、DkGal1およびDkArf1が果実軟化に主に関与していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、マイクロアレイ解析の結果から示唆される、果実軟化の引き金としてのエチレンを誘導する前兆の現象を支配する遺伝子候補を特定し、エチレン生成を誘導するメカニズムを解明しようとするものである。平成25年度はこのうちリポキシゲナーゼに着目し、果肉におけるエチレン生成誘導前に脂質過酸化レベルと電解質漏出量が増大することから、リポキシゲナーゼの発現がエチレン生成誘導に関わっている可能性を示した。また、アクアポリン遺伝子も関与していることを再確認した。さらに、エチレン依存タイプの細胞壁分解酵素のエチレン誘導による発現解析も行った。

今後の研究の推進方策

マスタープランにあるように、エチレン生成誘導要因解明のために、カキの幼果および成熟果において、アクアポリン、アスコルビン酸関連酵素、エクステンシン関連遺伝子に着目するとともに、細胞膜の劣化に関連するリポキシゲナーゼについても遺伝子発現解析を進める予定である。
具体的には、リポキシゲナーゼについては、平成25年度と同じサンプルを用いて酵素活性と遺伝子発現解析を行う。また、未調査の細胞壁分解酵素についても発現解析を進めエチレン依存性や果肉軟化への関連を確認する。
さらに、幼果および成熟果において、膜変性シグナルに関与すると思われるラジカル発生の有無と活性酸素種を特定する。電顕(SEM)を用いてエチレン生成誘導前後の果肉組織観察を行う。
平成24年度、25、26年度に行って得られた研究情報をもとに、果実軟化の引き金となるエチレンを誘導するメカニズム(プレエチレンイベント)について、樹上軟化と採取後軟化および採取・脱渋後の軟化に立て分けて総括し、学会発表と論文発表を行う。
なお、DNAマイクロアレイで網羅的解析を行った結果から候補遺伝子を選定してきたが、もう少し俯瞰的にエチレン生成誘導前のイベントを見直すために、次世代シークエンサーを用いた網羅解析を補完的に行いたい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Effect of ascorbate on prolonging shelf life of persimmon (Diospyros kaki Thunb.) fruit.2013

    • 著者名/発表者名
      Itamura, H., Nakatsuka, A.Sun,N.,Esumi,T.,Yamada,A.,Yano,K.and Nakagawa,T.
    • 雑誌名

      Acta Horticulturae

      巻: 989 ページ: 131-138

  • [雑誌論文] Relationships among ethylene, cell wall degrading enzyme activities andon tree softening in persimmon (Diospyros kaki Thunb.) fruit.2013

    • 著者名/発表者名
      Itamura, H., Nakatsuka, A.Adachi,T. and Yoshioka,M.
    • 雑誌名

      Acta Horticulturae

      巻: 996 ページ: 379-384

  • [雑誌論文] Analysis of expressed sequence tags from rapidly softened pulp of persimmon (Diospyros kaki Thunb.).2013

    • 著者名/発表者名
      Nakatsuka, A., Itamura, H.,Yano.K.,Abe,R.,Someya,T. and Nakagawa,T.
    • 雑誌名

      Acta Horticulturae

      巻: 996 ページ: 111-115

  • [雑誌論文] Studies on the ‘Tree factor’ and its role in regulating induction of ethylene in persimmon (Diospyros kaki Thunb.) fruit.2013

    • 著者名/発表者名
      Sun,N., Tang, Z.. Nakatsuka, A.and Itamura,H.
    • 雑誌名

      Acta Horticulturae

      巻: 996 ページ: 399-404

  • [学会発表] 細胞膜の劣化がカキ果実のエチレン生成誘導に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      川口 浩・中務 明・江角智也・板村裕之
    • 学会等名
      園芸学会平成26年度春季大会
    • 発表場所
      筑波大学(茨城県つくば市)
    • 年月日
      20140329-20140330
  • [学会発表] Research and utilization of persimmon (Diospyros kaki) fruit in Japan2013

    • 著者名/発表者名
      Itamura,H.
    • 学会等名
      International Academic Seminar of Germplasm Innovation and Use of China-ASEAN Subtropical Fruits and Vegetables
    • 発表場所
      Nanning, China
    • 年月日
      20131116-20131118
  • [学会発表] 樹上におけるカキ果実の軟化と細胞壁分解酵素遺伝子の発現2013

    • 著者名/発表者名
      中務 明・板村裕之
    • 学会等名
      日本食品保蔵科学会 第62回大会
    • 発表場所
      山形大学農学部(山形県鶴岡市)
    • 年月日
      20130615-20130616
  • [学会発表] カキ‘守屋’果実の褐変とポリフェノールオキシダーゼおよびアスコルビン酸との関係2013

    • 著者名/発表者名
      板村裕之・中務 明・米永裕二・末廣優加・江角智也・山内直樹
    • 学会等名
      日本食品保蔵科学会 第62回大会
    • 発表場所
      山形大学農学部(山形県鶴岡市)
    • 年月日
      20130615-20130616

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公開日: 2015-05-28  

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