研究課題
細胞膜の劣化がカキ果実のエチレン生成の誘導要因になっているのかを調査した。カキ‘西条’成熟果のドライアイス脱渋を行うと、エチレン生成誘導後、果肉硬度の低下と電解質漏出量の増加、還元型アスコルビン酸含量の減少が認められた。細胞膜の脂質を過酸化するリポキシゲナーゼ(9-LOX)はエチレン生成に応答して増加した。アクアポリン(PIP1)は処理後発現量が減少し、 PIP2の発現量に変化はなかった。1-MCP処理による実験も加味した結果、細胞膜の劣化はエチレン生成後に誘導されることが示唆された。なお、細胞膜に存在するアクアポリン遺伝子はエチレン生成誘導とは関連がないように思われた。また、カキ‘守屋’幼果の褐変は、エチレン生成が生体膜劣化(電解質の漏出と・OH様ラジカルの発生)を誘導し、液胞および色素体に局在するポリフェノールとポリフェノールオキシダーゼが溶出し、細胞質内で接触、酸化することで褐変物質が生じることによるものと考えられた。樹上で老化したカキ‘平核無’軟化果実において、エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)と果実軟化の関係を調査するため、樹上軟化した‘西条’果実由来のEST情報から新たに5種のXTH遺伝子情報DkXTH3-DkXTH7を取得した。DkXTH1とDkXTH2遺伝子は軟化度2で増加し、軟化度4にもう一度増加した。DkXTH5は軟化度3まで一定の値を推移し、軟化度4に増加した。DkXTH3の発現は軟化度3で最大に、DkXTH4は軟化度2で増加した後一定の値を推移したが、DkXTH6とDkXTH7の発現は軟化度の進行に対して減少傾向を示した。以上の結果より、樹上で老化した‘平核無’の果実軟化において、主にDkXTH1とDkXTH2および DkXTH5の発現が関与しており、特に強いエチレン依存性を示すDkXTH1の発現が重要であることが示唆された。
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Food Preservation Science
巻: 40 ページ: 185-193
ISSN 1344-1213, CODEN:NSHKCW