研究課題/領域番号 |
24580046
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 雅史 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (00305161)
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研究分担者 |
高田 教臣 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50355369)
山本 俊哉 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 上席研究員 (60355360)
清水 徳朗 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 上席研究員 (90355404)
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キーワード | 染色体 / ゲノム / ナシ / カンキツ / FISH / BAC-FISH / 遺伝子 / 不和合 |
研究概要 |
本年度はナシにおける重要形質である自家不和合遺伝子の染色体上での位置を検出することを目的として研究を実施した。 プローブの作成にあたっては、遺伝子登録情報を利用して自家不和合遺伝子の近傍の塩基配列を解析した。その結果、約5,000~8,000bpの6種類のプローブを得ることができた。これらのプローブについて、ナシおよびナシと近縁のリンゴの遺伝子情報に基づいて反復配列の有無について複数の方法で精査した。6種類のプローブのうち、3種類は内部にトランスポゾンを含み、1種類は100bp程度のチュウゴクナシの反復配列を、1種類は300bp程度のリンゴの反復配列を、1種類は800bp程度のリンゴの反復配列を含むことがわかった。 つづいて、これら遺伝子のナシ染色体上での検出を蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)によって実施した。遺伝子はニックトランスレーション法で標識し、FITCで可視化した。検出における蛍光強度を向上させることを目的として全てのプローブを混合してFISHを実施すると多数のシグナルが観察された。続いて6種類のプローブを単独で用いたFISHを実施した。内部にレトロトランスポゾンを含む3種類のプローブでは多数のシグナルが観察された。リンゴまたはナシの反復配列を含む残りの3種類のプローブでも数か所にシグナルが観察された。これらの結果は、用いたプローブが本来の自家不和合遺伝子だけでなくレトロトランスポゾンまたは反復配列の部分にハイブリダイズした結果だと考えられた。今後、本遺伝子の検出を成功させるためには、反復配列を含まないプローブを作製することが重要であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度には、ニホンナシにおける重要病害であるニホンナシ黒斑病抵抗性に関連する遺伝子のナシ染色体上における位置をBAC-FISH法によって明らかにした。 しかしながら、黒斑病同様に重要病害であるニホンナシ黒星病関連遺伝子に関しては、BAC-FISHを行うと目的遺伝子以外の部分に多数のシグナルが観察された。また、自家不和合遺伝子についても目的遺伝子以外の部分にシグナルが観察された。 以上に示したように、ナシにおいては、ニホンナシ黒班病関連遺伝子以外の遺伝子の染色体上における検出には成功していない。また、カンキツにおいては、染色体標本とプローブとなるBACクローンの準備はできているものの、各BACクローンの染色体上での位置の決定には至っていない。これらのことから、達成度を「(3)やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
ナシの自家不和合遺伝子については遺伝子情報を精査して反復配列を含まないプローブを作成し、それを用いたFISHを実施する。 また、従来、染色体標本の材料として交雑実生の根端を用いていたが、これらは親品種とは厳密には遺伝子型が異なるため、特定遺伝子の検出には問題となる場合もある。そのため、原品種の遺伝子型と同一の葉等の組織からの染色体標本作製技術およびそれを用いたFISH法を確立する。 さらに、ナシと近縁で遺伝子情報が豊富なリンゴを材料とした研究を実施することによって、ナシのゲノムおよび染色体理解を深める予定である。 カンキツにおいては各連鎖群に対応するBACクローンを用いたFISHを実施し、連鎖地図と染色体地図との対応関係の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
カンキツの各染色体に対応するBACクローンの選抜が予定より遅れたため、その単離に関する一部の実験が未実施であったことによる。 速やかにBACクローンを選抜し、その単離に関する実験に使用する。
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