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2013 年度 実施状況報告書

カーネーション老化時のエチレン生成誘導におけるABAの役割の解析

研究課題

研究課題/領域番号 24580050
研究機関京都府立大学

研究代表者

佐藤 茂  京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (40108428)

研究分担者 森田 重人  京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (20295637)
キーワードカーネーション / 花の開花と老化 / エチレン生成 / アブシシン酸 / キシログルカンオリゴ糖 / パラチノース / 2,4-ピリジンジカルボン酸
研究概要

ABA関連の研究が順調に進んでいるので、開花と老化の機構の解析と応用に研究を展開した。前年度に見いだしたキシログルカンオリゴ糖(XGO)とパラチノース(Pal)のカーネーションの開花促進作用と2,4-ピリジンジカルボン酸(PDCA)の老化抑制作用について、生理作用の特性の解析と分子作用機構の解析を行った。(1)タマリンドシードガム由来のキシログルカン(XG)から、XG7:XG8:XG9=1:4:5の構成比のXGOを調製した。1%のXGO溶液を投与して‘Pure Red’および‘Light Pink Barbara (LPB)’の開花を誘導することができた。開花誘導は‘Pure Red’では処理翌日に認められた。花弁細胞の細胞壁の伸展時におこるキシログルカン糖鎖転移酵素(XTE)によるXG鎖のつなぎ替えに、XGOが作用することを推定した。(2)Palは、スクロースのアナログであり植物細胞では代謝されない二糖と見なされてきた。‘Lillian’に1% Palを投与すると、開花が促進されることを見いだした。カーネーション花弁のα-グルコシダーゼによってPalが加水分解されグルコースとフルクトースが生成し開花のエネルギー源となるため、開花が促進されると推定した。(3)PDCAの、カーネーション切り花の老化抑制効果を詳細に解析した。大腸菌で発現させて得たカーネーションACC酸化酵素(DcACO1)を用いて、本酵素の補助因子であるアスコルビン酸とPDCAが拮抗して酵素活性を阻害すること確認した。また、2 mM PDCAがスプレーカーネーション‘LPB’の観賞期間を対照に較べて2.4倍延長した。これらの結果は、PDCA を新規切り花阻害剤として開発する将来の研究方向を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初、本研究は、カーネーション雌ずいにおけるエチレン生成の誘導因子が、アブシシン酸(ABA)であることを明らかにすることを研究目的にした。初年度の研究によって、ABA含量の変動調査、ABA生合成と作用関連遺伝子群の発現解析を寿命が異なる3品種を用いて解析して、ABAの中心的な役割を明かにした。特に、花持ち期間の異なる品種群を用いた解析は、当初の予想を超えて目覚ましい成果を上げた。成果を園芸学会誌に発表した(JJSHS 82(3):242-254,2013)。
カーネーション品種‘エクセリア’を用いてABA、ABA合成阻害剤、ABA作用阻害剤の作用を検討して、ABAの役割に関して傍証を得ることを、2013年度に計画した。しかし、(1)本研究の材料が花き研究所で栽培されていて京都府大にはないこと、(2)実験を担当する予定であった大学院生の病気になり、花き研究所への出張実験ができなかったことのため、実験の実施が先送りされている。しかし、この実験の結果、あればより良いが初期の研究目的のためには、必須ではない。
他方で、本年度はカーネーションを花き材料にして、開花と老化を制御する薬剤の探索を行い、キシログルカンオリゴ糖やパラチノース、2,4-ピリジンジカルボン酸、2-アミノオキシイソ酪酸(AOIB)などを発見し、その生理作用の調査と作用機構の解析を行った。AOIBについては、研究実績では触れなかったが、新規切り花鮮度保持剤として特許出願し,成果をまとめて論文投稿中である。
これら全体の研究の進展と展開の現状から、研究の達成度は、「(1)当初の計画以上に進展している」と考えている。

今後の研究の推進方策

今年度に明らかにした2,4-ピリジンジカルボン酸(PDCA)の生理作用と作用の分子機構をより詳しく解析する。PDCAは、2-オキソグルタル酸を補因子として要求する酸化酵素に対して、拮抗阻害剤として作用することが知られている。このような酵素に、ジベレリン(GA)生合成経路の3β-水酸化酵素(活性型GAを作る)と代謝経路の2β-水酸化酵素(GAを不活性化する)が含まれている。スイセン、ユリ、アルストロメリアなどの単子葉植物園芸花きでは、切り花の葉の黄化によって観賞価値を失う。GAは葉の黄化を抑制する。PDCAがチューリップの花茎伸長効果を持つことを既に見ており、見かけ上のGA活性を有するのではないかと考えている。これらの知見をさらに発展させて、PDCAがエチレン生成阻害作用と見かけのGA活性を併せ持つ薬剤として、新規の切り花鮮度保持薬剤として実用できることを、実験的に証明する。
ABA、ABA合成阻害剤、ABA作用阻害剤を用いてABAの役割の傍証を得る実験は、担当する院生の病気の回復を待って再開する。回復が思わしくない場合は、この実験については、本研究に於いて必須ではないので、中止せざるを得ないと考えている

次年度の研究費の使用計画

カーネーション品種‘エクセリア’を用いてABA、ABA合成阻害剤、ABA作用阻害剤の作用を検討して、ABAの役割に関して傍証を得ることを計画したが、実験を担当する予定であった大学院生の病気のため、実験を実施できなかったためである。しかし、この実験の結果はあればより良いが、なくても初期の研究目的には必須ではないので,さらなる対処はしなかった。
特に、2年度で明らかになった2.4-ピリジンジカルボン酸の開花促進と老化阻害作用の解析に集中して実験を行うための研究器材と薬品の購入費に当てる。また、9月の園芸学会秋季大会での成果発表のための旅費、論文原稿の英文校閲と投稿費に使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] 2,4-Pyridinedicarboxylic acid prolongs the vase life of cut flowers of spray carnations.2014

    • 著者名/発表者名
      Satoh, S., Kosugi, Y., Sugiyama, S. and Ohira, I.
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese Society for Horticultural Science

      巻: 83 ページ: 72-80

    • DOI

      10.2503/jjshs1.CH-082

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Expression and regulation of senescence-related genes in carnation flowers with low ethylene production during senescence.2013

    • 著者名/発表者名
      Tanase, K., Otsu, S., Satoh, S. and Onozaki, T.
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese Society for Horticultural Science

      巻: 82 ページ: 179-189

    • DOI

      10.2503/jjshs1.82.179

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Role of ABA in triggering ethylene production in the gynoecium of senescing carnation flowers: changes       in ABA content and expression of genes for ABA biosynthesis and action.2013

    • 著者名/発表者名
      Nomura, Y., Harada, T., Morita, S., Kubota, S., Koshioka, M., Yamaguchi, H., Tanase, K., Yagi, M., Onozaki, T. and Satoh, S.
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese Society for Horticultural Science

      巻: 82 ページ: 242-254

    • DOI

      10.2503/jjshs1.82.242

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Preparation of a xyloglucan oligosaccharide mixture from tamarind seed gum and its promotive action on flower opening in carnation cultivars.2013

    • 著者名/発表者名
      Satoh, S., Tateishi, T. and Sugiyama, S.
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese Society for Horticultural Science

      巻: 82 ページ: 270-276

    • DOI

      10.2503/jjshs1.82.270

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Palatinose-hydrolyzing activity and its relation to modulation of flower opening in response to the sugar in Dianthus species.2013

    • 著者名/発表者名
      Satoh, S., Miyai, M., Sugiyama, S and Toyohara, N.
    • 雑誌名

      Journal of the Japanese Society for Horticultural Science

      巻: 82 ページ: 337-343

    • DOI

      10.2503/jjshs1.82.337

    • 査読あり
  • [学会発表] PDCAのスプレーカーネーション切り花の観賞期間延長作用2014

    • 著者名/発表者名
      杉山想、小杉祐介、大平育実、森田重人、佐藤茂
    • 学会等名
      園芸学会 (平成26年度春季大会)
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      20140329-20140330
  • [学会発表] Search for new chemicals which modify flower opening and senescence in cut flowers of spray carnations2013

    • 著者名/発表者名
      Shigeru Satoh
    • 学会等名
      The 2nd Southeast Asia Symposium on Quality Management in Postharvest System
    • 発表場所
      Vientiane, Lao RDR
    • 年月日
      20131204-20131206
    • 招待講演
  • [学会発表] キシログルカンオリゴ糖のカーネーションに対する開花促進作用2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤茂、立石亮、杉山想
    • 学会等名
      園芸学会 (平成25年度秋季大会)
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      20130920-20130922
  • [学会発表] 園芸花きの開花と老化を制御する新規薬剤の探索

    • 著者名/発表者名
      佐藤茂
    • 学会等名
      近畿植物学会
    • 発表場所
      大阪市立大学(理学部付属植物園)
    • 招待講演
  • [産業財産権] 植物のエチレン生合成阻害剤とその利用2013

    • 発明者名
      豊原憲子,佐藤茂、東明音
    • 権利者名
      大阪府環境農林水産研、京都府立大学、クリザール・ジャパン
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      MAC-11529
    • 出願年月日
      2013-11-09

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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