研究実績の概要 |
カーネーションでは、雌ずいで生成するエチレンが花の老化の「スターターエチレン」として働いている。本研究の当初の目的として、アブシシン酸(ABA)が雌ずいのエチレン生成誘導因子であることを実証することを取り上げた。平成24年度の研究では、カーネーションのABA生合成ではカロチノイド開裂酵素遺伝子DcNCED1が、ABA作用ではABA受容体遺伝子DcPYR1が鍵遺伝子として機能することを明らかにした。さらに、短寿命性を示すカーネーション品種 ‘ライトピンクバーバラ(LPB)’と‘エクセリア(Exc)’、および長寿命品種‘ミラクルルージュ(MR)’を用いて、開花と老化時の雌ずいおよび花弁におけるABA含量の変動調査とABA関連遺伝子発現の比較解析を行った。この結果から、カーネーションにおいて、ABAがエチレン生成誘導因子としての機能していることを実証した。 ABA関連の研究が順調に進んだので、ABAのエチレン生成誘導における役割の解析を継続すると共に、平成25年度から開花と老化の機構の解析と応用に研究を展開した。平成25年度は、カーネーション切花を材料に用いて、キシログルカンオリゴ糖とパラチノースによる開花促進作用、2,4-ピリジンジカルボン酸(2,4-PDCA)、の老化抑制作用の特性の解析し分子作用機構を明らかにした。 平成26年度(最終年度)は、PDCAの作用の解析をさらに進めて、この物質がスプレーカーネーションの老化を抑制すると共に蕾の開花を速めること、および本来開花せずに寿命を終わる蕾の開花を誘導することを見出した。PDCAのスプレーカーネーションの観賞期間延長作用は、この3つの作用が合わさって発現され流ことを明かにした。この結果をまとめて、「PDCAは花を早く咲かせて長持ちさせ、しかも、本来咲かない蕾も咲かせる夢の薬剤である」ことを提案した。
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