研究課題/領域番号 |
24580053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
一ノ瀬 友博 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (90316042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流域圏 / 社会・生態システム / 人口減少 / 被災地 / 生態系サービス / ドナウ川 / 気仙沼市 / バックキャスティング |
研究概要 |
平成24年度は、宮城県気仙沼市を中心とした被災地における調査研究と、ドナウ川流域における事例調査の両面から研究を進めた。気仙沼市においては、唐桑半島の付け根に位置する舞根地区を対象とした。舞根地区は、東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた津波により、52世帯のうち44世帯が全壊・流出という壊滅的な被害を受けた。被災直後の2012年4月下旬には高台移転を目指す期成同盟会を設立し、全被災地の中でも最も早く高台移転の大臣合意までこぎ着けた。この舞根地域において、オーラルヒストリーの手法を用いて、地域の震災の記憶と歴史を掘り起こし、高台移転後の地域づくりの合意形成支援を行ってきた。当初は、遠隔システムを用いた支援を予定していたが、舞根地区に関しては2箇所の仮設住宅に被災者がまとまって生活しているため、通常の議論には大きな問題がなかった。しかし、目の前の高台移転についての議論は進んでも、移転後の生活や地域のあり方をイメージできないという問題が見受けられたので、オーラルヒストリーによって収集された情報を元に、冊子を作成し、今後の地域づくりを議論するためのきっかけを提供した。 ドナウ川の流域の調査に関しては、2012年9月から現地調査、ヒアリングを行ってきた。古くは東西の接点であったオーストリアとスロバキア、チェコの国境では、両陣営の緩衝帯として自然環境が保全されてきたが、冷戦終結とともに、その多くが開発や管理放棄の危機にさらされている。ドナウ川流域では、国境を越えた連携によって、自然環境保全が進められていることが明らかになった。一方で、近年EUに参加した東ヨーロッパの国々では、様々な開発プロジェクトが立ち上がり、流域各国での調整の必要が生じている。2010年にはEUレベルでドナウ川の流域圏の戦略が策定され、アクションプランが実施されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始1年目は、ほぼ順調に研究を進めることができた。当初の研究計画から変更した点としては、上記の実績にも記載したように、ソーシャルネットワーキングサービスを活用した合意形成支援システムについてである。既にFacebookを活用した手法を手がけ、現地において講習会も実施してきたが、対象者が高齢者であることと、舞根地区においては遠隔システムが必要なかったことから、現地の状況にあわせ、冊子を媒介とした方法に変更した。この手法の変更は、研究の全体構成には、ほとんど影響を及ぼさない。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、当初の予定通り、宮城県と岩手県にまたがる圏域を対象に、社会・生態システム圏域の設定を進める。現地調査は舞根地区から、旧唐桑町の範囲に広げ、他の地域の高台移転の合意形成についても調査する。加えて、最近は急速な人口流失と高齢化が津波被災地においても、指摘されている。よって、特に人口減少に着目して、持続可能性を検討する。既に、人口減少が著しい三陸沿岸自治体については情報を収集している。 ドナウ川の流域については、2013年5月にルーマニアのドナウデルタ地域の現地調査を実施する。世界自然遺産に指定されている地域であるが、住民の所得は低く、人口が流失している。自治体やEUの戦略についてヒアリングするとともに、地域住民に対する調査も行う。加えて、ドイツのヘッセン州において、実施されている農村地域における生態系サービスを社会・経済的側面から検討するプロジェクトに対し、ヒアリングを実施し、将来予測モデルについて情報を収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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