研究課題
平成25年度は、24年度に引き続きヨーロッパ・ドナウ川の流域圏の環境戦略に調査研究を進め、ルーマニアのドナウデルタ、チェコ南部のHodonin周辺の農村地域等で、現地調査を行い、加えて25年6月のドナウ川の氾濫の際には、ウィーン及び周辺地域、ブダペストで緊急現地調査を実施した。25年の5月から6月には、ヨーロッパ一帯で降水量が多く、5月末にライン川でも小規模な氾濫が発生していたが、6月上旬のドナウ川およびその支流における氾濫は、10年ぶり程度の氾濫の規模で、ザルツブルクでは死者も出す事態であった。ウィーン市内においても、ドナウ川の河川敷が水没し、堤外地に位置するレストランなどには被害が出たが、調整池や周辺の農地への導水により市街地にはほぼ被害がなかった。ドナウ川流域の調査についてはとりまとめをしており、26年1月にも口頭で発表している。国内においては、25年度から津波被災地の気仙沼市における調査を継続しており、舞根地域においてはオーラルヒストリーの手法を用いた高台移転の支援を実施してきた。高齢者が多い集落においては、ワークショップなどの手法により地域の将来像を描くことが困難であるが、津波被災時の対応、その後の行動、さらには津波被災前の地域との繋がりなどをヒアリングすることによって、地域の将来を議論するきっかけを提供してきた。この成果は、12月に原著論文として発表することができ、地域に対しては25年度に引き続き、冊子として還元することにしており、26年5月には完成した冊子を期成同盟会に提供する予定である。加えて、被災地における生物相の変遷状況や自然再生エネルギーのポテンシャル評価など、並行して取り組んできた内容で原著論文を発表できた。
2: おおむね順調に進展している
本研究は社会・生態システムの土地利用計画手法の開発を目標としているが、同時に東日本大震災の被災地において調査研究を進めており、常に復興支援も意識している。特に、舞根地区においては、研究室の学生とともに頻繁に訪問し、場合によってはボランティア活動なども行う中で、25年度に原著論文を発表できたことは、大きな成果であると考えている。加えて、11月に環境情報科学センターの全国大会で行ったポスター発表では津波後の西部相の変遷状況を発表したが、理事長賞を受賞している。25年度は多くの成果を公表することができ、順調に研究が進展していると考えている。
研究は順調に進んでおり、基本的に計画通り遂行していく予定である。ただし、本研究では生活圏の把握のために携帯電話の位置情報データを用いた分析を予定していた。これは、研究計画時点で、ある通信事業者と調整して計画していたことであるが、その後ビッグデータとして関係のデータがマスコミ等で大きくクローズアップされたことによって、データの提供を受けることが難しくなってしまった。しかし、平成25年度から高台移転状況を広範囲に情報を集め、分析を行っており、そのデータを用いなくても、当初の計画を推進できると考えている。
気仙沼市舞根地区のオーラルヒストリーの成果をまとめた冊子を当初平成25年度中に印刷する予定であったが、3月にも調査を実施したため、平成26年度に入ってからの印刷・発行とすることに変更し、現在とりまとめを行っている。よって、次年度使用額が生じた。26年5月に印刷、発行予定である。
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Earth and Environmental Science
巻: 17 ページ: 012078
10.1088/1755-1315/17/1/012078
農村計画学会誌
巻: 32 ページ: 209-214
巻: 32 ページ: 24-28