昨年度までの測定条件検討の結果を受け、暗期なし、励起光照射時間5秒、遅延発光量測定5秒とし、枝付傷接種により抵抗性と判定されたモモ‘チマリッタ’及び‘もちづき’、罹病性と判定された‘あかつき’、‘あきぞら’および‘川中島白桃’を供試し、モモせん孔細菌病菌の接種の有無による遅延発光量の差異について測定を行うとともに、抵抗性の判定基準について検討を行った。遅延発光量は、病菌の接種により、無接種葉に比べて低下する傾向が認められ、特に照射から1秒後までの発光量におおきな差異がみられた。‘あかつき’、‘あきぞら’は接種2日後の測定では病菌接種による発光量の落ち込みは小さかったが接種4日後には顕著に低下し、無接種の半分程度となった。6日後にはこうした接種による落ち込みは回復した。これに対して‘チマリッタ’は4日後でも接種による発光量の落ち込みが小さく、6日後に上位葉に落ち込みが生じた。‘もちづき’および‘川中島白桃’は、前述の3品種とは異なり、接種2日後から菌接種による遅延発光量の落ち込みが顕著であり、4日後までこの状態が継続した。6日後には両品種ともこの落ち込みから回復したが、‘もちづき’の上位葉は無接種葉の2倍程度にまで発光量が増加するなど特異な経過を示した。 以上のように、モモせん孔細菌病菌の接種により、モモ葉の遅延発光量は顕著な影響を受けることが判明した。しかし、抵抗性と判定されている‘チマリッタ’と‘もちづき’で発光量の変化のパターンが異なること、罹病性品種においても反応の遅速に差異があることなどから、これまでの試験では、本病に対する抵抗性判定基準を策定するには至らなかった。本病に対する抵抗性が、植物側の耐性誘導によるとすると2つの抵抗性が異なる機構によるとの推定も可能であり、さらに検討が必要である。
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