研究課題/領域番号 |
24580055
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
山田 邦夫 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (30345871)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バラ / 光刺激 / 花弁成長 / 発光ダイオード |
研究概要 |
本研究の目的は、光刺激と花弁成長との関係を明らかにし、つぼみからの開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を光によって人為的にコントロールすることを目標としている。 本研究ではまず、光刺激が切りバラの開花にどの様な影響があるかを調査した。本年度は様々な光照射時間での開花の様子を解析すると共に、LEDを用いて特定の波長の影響を調べた。さらに、明期暗期での遺伝子発現量を調査するために、明期開始直後と暗期開始直後のバラ花弁からmRNAを抽出した。花弁成長に関わるとされている遺伝子として、花弁細胞壁のゆるみに関連したエクスパンシンおよびエンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)に注目し、定量的PCRなどにより遺伝子発現量を現在解析中である。また、細胞壁のゆるみ以外の花弁成長因子を調べるために、花弁中の糖代謝について調査した。酸性インベルターゼは、葉から花弁に転流してきたスクロースをヘキソースに分解する酵素であり、花弁中に多くの糖を蓄積させるのに重要な酵素である。本実験により、バラを切り花として収穫することで、本来花弁中で上昇するはずの酸性インベルターゼ活性が上昇せず、切り花とした後では花弁中の糖代謝が著しく悪化していることが明らかとなった。その原因として植物ホルモンの関与が示唆され、特にオーキシンおよびメチルジャスモン酸が酸性インベルターゼ活性に影響を与えていることを明らかにした。これら糖代謝に関わる酵素についても、光刺激による発現誘導機構を明らかにすることで、花弁成長リズムの分子機構を解明することが出来るものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定していた現象をほぼ解析することが出来た。また遺伝子解析のターゲットとした細胞壁弛緩関連タンパク質や糖代謝関連酵素について、開花との関連や植物ホルモンによる影響を明らかにすることが出来た。ただし、切り花の開花リズムにおける蒸散量の影響については、研究の優先順位の都合上行うことが出来なかった。そのため、現在までの達成度として「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は前年度に引き続き、糖代謝および細胞壁のゆるみが花弁のリズム成長に関連しているかを調査する予定である。特に細胞壁の緩みに関して、エクスパンシンやXTHという酵素が花弁成長のもっとも盛んな数日の間に劇的に発現量を増加していることを私の研究グループは明らかにしているため、本年度は、これら遺伝子の発現量を明期開始直後と暗期開始直後とで比較し、光刺激との関連性を明らかにする予定である。さらに前年明らかにした糖代謝関連酵素についても光による発現調節の有無を調べ、リズム成長との関連を明らかにする。さらに本年度は、壁のゆるみや糖代謝以外の要因として、水チャネル(アクアポリン)についても着目する予定である。花弁細胞の肥大成長は、糖代謝と細胞壁のゆるみが主要因となり開始されるが、肥大するためには細胞内への水の流入を伴い、細胞内外の水の出入りを直接制御しているタンパク質としてはアクアポリンがあげられる。アクアポリンは細胞壁の緩みと密接に連動して開花現象に関係しているものと思われるため、エクスパンシンやXTHの遺伝子発現と関連づけて考察したい。アクアポリンはタンパク質のリン酸化によって活性が制御されていると言われており、そのリン酸化部位も判明している。バラ花弁においてアクアポリンのリン酸化がリズム成長とどう関係しているか明らかにするために、リン酸化したアクアポリンを特異的に認識する抗体を使い、光刺激とアクアポリンのリン酸化との関係を解析する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として106,016円とあるが、これは大学の会計規則により平成24年度の3月31日までの支出とならなかったもので、すべて平成25年3月に使用済みである。
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