ブドウ果皮の着色は、アブシシン酸(ABA)と関連が深いことが知られている。また着色期に低温に遭遇すると、果皮ABA濃度が上昇し、着色が改善することも知られている。本研究ではブドウの着色におけるABAの役割について、ABA濃度の測定およびABAシグナル伝達系を司るタンパク質の遺伝子発現解析を通して検証することを目的としている。 最終年度はABAおよびABA生合成阻害剤が、アントシアニン濃度、ABA濃度およびABAシグナル伝達系タンパク質をコードする遺伝子の発現に及ぼす影響を調査した。 具体的には着色初期の「巨峰」果粒に対しABAおよびノルジヒトログアイアレティック酸(NDGA)等のABA生合成阻害剤を処理した。対照として無処理区を設けた。これらの果粒を15度と30度に設定したインキュベータで一定期間インキュベートした後、果皮アントシアニン濃度、ABA濃度およびABAシグナル伝達系等のタンパク質をコードする遺伝子の発現解析を行った。 すべての処理区においてアントシアニン濃度は15度の方が30度より高かった。対照区とABA生合成阻害剤処理区との間でアントシアニン含量に明確な差は見られなかった。ABA濃度に関しても同様の傾向がみられた。ABA処理区では対照区よりもアントシアニン濃度が高かった。 ABAシグナル伝達等に関与する遺伝子のうち、SnRK5、PP2C、RCARについて発現解析を行ったところ、これらのうちいくつかはABA濃度と発現量がよく対応することが確認された。
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