緑化植物による蒸発散量の推定や放射熱量の定量的な緩和効果について、基礎的データの蓄積を図ることは大変重要な課題であるが、高木を単木で蒸発散量を実測した研究成果はこれまで見られなかった。そこで本研究は、重量法による高木の蒸発散量の実測を通年で行い、また今後、これまでに行われてきた他の手法との比較を行い、実測値との比較、検証を行う。得られた値は高木だけでなく、低木、地被植物との精度の高い比較が出来るほか、植栽密度による蒸発散量の効果の比較の貴重な基礎データとなる。 (1)試験体の管理 平成24年度に設置した以下の試験区の管理を行った。日射遮蔽のない平坦な圃場に高木の植栽用のコンテナを2基設置し、うち一基にケヤキを植栽し、もう一方のコンテナは植栽せずに比較対照区とし、あわせて土壌表面からの蒸発量を測定した。 (2)測定 ライシメーターを用いた重量法による蒸発散量の実測を連続して実施して、通年の重量変化から、季節毎の傾向を把握する。また、樹冠面積、気象データ及び蒸発散量との相関の大きい土壌水分、PAR(光合成有効放射)を計測し、突き合わせた。また別途共同研究先の協力を得て、実験場所周辺の微気象を3次元超音波風速計を用いて計測した。重量計の結果から、樹木の重量変化、すなわち樹木による蒸発散量が詳細な数値で変化する様子が確認できると共に、他の気象条件等からの影響等を考察した。 (3)実測結果のヒートアイランド対策への展開 実測で得られた結果を基に、高木一本の蒸発散量とその年間傾向を検討し、学術雑誌に発表した。得られた成果を踏まえ、今後は都市のヒートアイランド緩和策に繋がる有効な高木の配置や密度について、今回の実測値を単木の基礎データとして用いることにより推計や、CASBBE-HIなどの敷地内の環境性能評価における樹木の効果について、より適切な評価に繋げることが可能である。
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