研究課題/領域番号 |
24580063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人酒類総合研究所 |
研究代表者 |
後藤 奈美 独立行政法人酒類総合研究所, 醸造技術基盤研究部門, 部門長 (60372190)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ブドウ / 甲州 / Vitis vinifera / SNP |
研究概要 |
1.目的 わが国の在来ブドウ品種、甲州は、白ワイン用ブドウとして重要な品種である。甲州は東洋系Vitis viniferaとされているが、異なる意見もあることから、その分類的位置づけを明らかにすることを目的に一塩基多型(SNPs)解析を行った。 2.方法 大規模なブドウSNPs解析を報告しているMylesらから、ブドウ野生種と栽培品種の識別に有効なSNPsアレイの情報提供を受け、これを基にPCRプライマーの設計、増幅及びサンガー法によるシーケンスを48 SNP遺伝子座について行った。DNAは、甲州等東洋系5品種、ピノ・ノアール、甲斐ブラン、アメリカ系品種のコンコード、及び東アジア系野生種4種の12品種/種を用いた。 3.結果と考察 得られたSNPsの大部分はMylesらのデータと同じ2塩基多型であったが、1遺伝子座のみ、他の品種がC/Tの多型であるのに対し、甲州、甲州三尺、甲斐ブラン(甲州×ピノ・ブラン)の3品種がA/Tを示した。 野生種ではヘテロザイガスな遺伝子座が0~5箇所のみであったが、交配品種のコンコード及び甲斐ブランでは25、及び21箇所あった。在来品種のうち、ピノ・ノアールなどはヘテロザイガスが7~12箇所であったが、甲州及び甲州三尺は25及び23箇所と多かった。この理由として、甲州と甲州三尺は、比較的遠い関係の品種の自然交配実生である可能性が推定された。 GenAlExソフトウェアを用いて、供試品種/種の間の距離を計算し、主座標分析(PCoA)を行った。第一座標で野生種と栽培品種が大きく分かれ、甲州は甲斐ブラン及び甲州三尺とともに栽培品種のやや野生種よりにプロットされた。これまでのSSR等の結果も併せて考察すると、甲州は甲州三尺に近い品種で、V. viniferaのクラスターに含まれるが、一部、他のV. vinifera品種とは異なる配列を持つ、と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書提出の時点で、Mylesらからブドウの野生種及び栽培品種の識別に有効なSNPsの情報が得られていたことから、計画どおり、甲州を含む東洋系品種や対象となる西洋系品種、アメリカ系品種、及び東アジア系野生種のSNPs解析を行い、統計解析まで行うことができた。現在、SNPsデータはMylesに送付しており、彼女たちが解析した多数のブドウ品種、野生種との関係が解析される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
○‘甲州’及び他の東洋系品種の核ゲノムDNAのSNPs解析 核ゲノムDNAのSNPs解析を終了し、報文を作成する。また、投稿原稿が受理された時点で、OIVに資料提供を行う。 ○‘甲州’及び対照とする西洋系品種の葉緑体DNAの部分シーケンス ブドウ新葉から抽出したDNAには葉緑体DNAが含まれていることから、これから葉緑体DNAの配列の一部をPCR増幅し、シーケンスを得る。ターゲットとなる葉緑体DNAはサイズが小さいこと(約161 kb)から、他の植物やブドウでシーケンスの多型が報告されている部分を中心にPCRで増幅することとする。サンガー法によるシーケンスの確認の後、品種ごとにタグを付けたマルチプレックスシーケンスを行う。葉緑体DNAのシーケンスは保存性が高いことがよく知られているため、得られる短いシーケンスはアセンブルせず、報告されているブドウ葉緑体DNA配列に対して直接マッピングを行い、SNPs情報を得る。この方法では、複数の品種及び部位の増幅断片を混合して、一度にシーケンスを行うことができる。 (1)ブドウ葉緑体DNAの部分配列を増幅するため、ロングPCRのプライマーを設計し、増幅を確認する。葉緑体ゲノムにはマッピングが困難なInverted Repeat領域があるため、これを除いた約2/3の領域を解析対象とする。 (2)品種ごとにバーコード配列を付加したシーケンスライブラリを作成する。Illumina社Genome Analyzerによってシーケンスを得る。なお、次世代DNAシーケンサー及び周辺技術は、急速に進歩しており、より効率的、経済的な方法が開発された場合は、研究全体の整合性も考え、可能な範囲で新しい方法に切り替えることとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、予定よりも必要経費が少なくてすんだことから、この成果を投稿する際、サンプル数を増やすことが望ましいと判断された場合には、新しいサンプルを用いて実験を追加する。 25年度以降に取り組み予定の葉緑体SNPs解析では、方法の有用性を確認した後、サンプル数を増やしてより詳細な検討を行うこととする。また、次世代シーケンサーによるシーケンス解析には、外部委託を有効に活用する。
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