研究課題/領域番号 |
24580063
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研究機関 | 独立行政法人酒類総合研究所 |
研究代表者 |
後藤 奈美 独立行政法人酒類総合研究所, 研究企画知財部門, 部門長 (60372190)
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キーワード | ブドウ / 甲州 / Vitis vinifera / SNP / 葉緑体DNA / 国際情報交換 / カナダ |
研究概要 |
1.目的 わが国の在来ブドウ品種、甲州は、白ワイン用ブドウとして重要な品種である。甲州は東洋系Vitis viniferaとされているが、異なる意見もあることから、その分類的位置づけを明らかにすることを目的に、一塩基多型(SNPs)解析、及び葉緑体DNAの部分解析を行った。 2.方法 昨年得られた甲州を含む12品種、48 か所のSNPsデータは、このSNPsを開発したMylesらの協力を得て主成分解析を行った。また、Zeccaらの報告(2012)をもとに、Vitis属で多型が報告されている4か所の葉緑体DNAの部分配列を増幅し、ダイレクトシーケンスを行った。 3.結果と考察 SNPsデータの主成分解析の結果、東アジア系のブドウ野生種とV. vinifera栽培品種が第1主成分で大きく分かれた。甲州、甲州三尺などはV. viniferaに近いが、やや野生種寄りにプロットされた。第1主成分上の距離からV. viniferaの割合を計算すると、甲州71.5%、甲州三尺81.8%等となった。 葉緑体DNAの部分シーケンスでは、甲州とChardonnayの間に9か所でSNPsまたはin/delによる差異が認められたが、その他の東洋系4品種の葉緑体DNAはV. vinifera型であった。甲州とChardonnayで差違のある9箇所について、データベースに登録されている野生種の葉緑体DNAシーケンスと比較したところ、甲州は北米系の野生種とは一致する箇所が少ないが、東アジア系の野生種と一致する箇所が多く、そのうち、V. davidiiの1系統と9か所全部で一致した。 以上、SNPs解析の結果から、甲州等のゲノムには一部野生種の遺伝子が含まれることが示唆され、雑種第二代または三代であろうと推定された。また、葉緑体DNAの結果から、甲州は胚珠親の系統が東アジア系の野生種であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、SNPsデータに基づく統計解析を終了するとともに、葉緑体DNAの部分シーケンスにより、興味深い結果を得ることができた。課題申請時には葉緑体DNAの大部分を解析する予定であったが、Vitis属内で多型の多い領域が報告されたことから、領域を絞り込んで解析を行うことで、効率的な検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
○ 25年度の結果で、甲州の葉緑体DNAの部分配列は中国の野生ブドウ V. davidii と一致することが明らかになった。その後、国内にV. davidiiが1系統保存されているという情報がえられたことから、本年はV. davidiiとの比較に重点をおき、SNPs解析および葉緑体DNA解析を行うこととする。 ○ 得られた結果を取りまとめ、報文を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
葉緑体DNAのシーケンスを部分シーケンスで行ったため、経済的かつ効率的に実験をすすめることができたことから、予算に残余を生じた。 前年度、甲州の葉緑体DNAの部分配列が中国の野生種、V. davidiiと一致することが明らかになったことから、本年度は甲州とV. davidiiの葉緑体DNAシーケンスを行うなど、有効に活用したい。
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