研究課題
本研究では宿主ゲノム上に存在する非レトロRNAウイルス様配列(NRVS, 古のウイルス感染記)のさらなる探索を、植物ならびに関連の深い昆虫や菌類で展開し,それらと現代ウイルスとの関係を理解することを目指している。さらに、これらのNRVS配列のゲノム挿入メカニズムや配列の存在意義を理解するための基盤整備を目的とした。本年度の主な実績は以下の通り。1.植物・昆虫類ゲノム上のNRVS検索では、植物RNAウイルス(アルファウイルス様スーパーファミリー)の複製酵素類似配列が数種昆虫種で見出されている。このうちマルハナバチ属の解析では、ゲノムPCRにより異なる種間で近似のNRVS配列が増幅され、挿入イベントがマルハナバチの種分化のタイミングまで遡ると想像された。また、他の昆虫類の転写物データベースに現代版の近縁ウイルスの存在も示唆された。分子系統解析の結果、これらのNRVSは既知植物ウイルス(ビルガ、ブロモ、クロステロウイルス科など)とは独立したクレードを形成した。2. NRVS検索で発見した菌類モノネガウイルス(マイナス鎖RNAウイルス)の一種は,昨年度ダラースポット病菌に存在することを見出した。本年度は、新たに食用キノコに別種のモノネガウイルスの感染が示唆され、その部分配列を取得した。さらに、データベースの転写物やゲノム配列の再検索を行った結果、昆虫類に多様なモノネガウイルスの存在が示唆された。これらの配列を用いた分子系統解析により、既知のラブド、フィロ、パラミクソ、ボルナ、ニャミウイルス科とは独立した複数のクレードが確認され、未知のウイルス科を形成するグループの存在が示唆された。
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Virology
巻: 452-453 ページ: 166-174
doi: 10.1016/j.virol.2014.01.007.
Proc. Symp. 9th Int. Working Group on Plant Viruses with Fungal Vectors
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