研究課題/領域番号 |
24580065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西口 正通 愛媛大学, 農学部, 教授 (40343313)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | RNA サイレンシング / イネ / 植物 / ウイルス / siRNA / miRNA / qiRNA / DNA損傷 |
研究概要 |
OsRDR1やOsRecQ1等のRNAサイレンシングに関与するイネ遺伝子の突然変異株を用いた解析研究を進める内容である。まず、イネに感染するウイルスについての検討であるが、イネに感染するウイルスはイネ萎縮ウイルスをはじめほとんどがウンカ等の昆虫により感染する。そのため、媒介昆虫の飼育等、実験上の制約が多い。そこで、モデルとして、汁液接種が可能なウイルスとして、CMVを取り上げ、イネへの接種調査を行った。イネ(日本晴)にCMVを接種し、接種後約10日間後の接種葉ならびに非接種上位葉について、RNAを抽出し、RT-PCRを行った。その結果、両葉ともに陽性の反応を得た。シグナルは接種葉の方が高く、CMV-RNA蓄積が多いという結果であった。OsRDR1が関係する小分子RNAについても研究を進め、根、葉及び花芽組織から、小分子RNA画分を調製し、ブロッティング後、いくつかのmiRNAのプローブを用いて、変異株と野生株において蓄積に違いが見られるかについて検討した。その結果、一部のmiRNAについて、組織特異的な発現の違いが見られた。また、このとき、OsRDR1変異株において、野生株とは全く正反対の結果を示すmiRNAも見つけることができた。OsRecQ1についてRNAサイレンシングに関与することがすでに報告しているが、本変異株ならびに上記OsRDR1変異株においてDNA損傷に関わる役目を果たす新規小分子RNAであるqiRNAの合成への関与について検討を行った。その結果、OsRecQ1及びOsRDR1変異株の両株において、qiRNA蓄積が全く見られないことを見い出した。qiRNAについてはアカパンカビのみおいて報告があるだけで他の生物について類似に機構があるか明らかではなかったが、本結果は類似の機構が菌類以外にも存在することを示した動植物界を通じて、世界で最初となるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
OsRDR1やOsRecQ1等のRNAサイレンシングに関与するイネ遺伝子の突然変異株を用い、①イネに感染するウイルスを接種し、ウイルス防御反応との関係について検討する。②内在遺伝子に由来するmiRNA等小分子RNA蓄積に対する影響を小分子RNA画分を用いたノーザンブロット解析により検討する。③また、これまで研究蓄積のあるサイレンシング関与遺伝子であるOsRecQ1についての変異株についての研究から、本変異株においてDNA損傷に関わる役目を果たす新規小分子RNAであるqiRNAの合成への関与について検討を行う、などに関して精力的に研究を進め、OsRecQ1及びOsRDR1遺伝子の両者ともに、それぞれqiRNA合成の役割を担っていることを明らかに出来たことなど、予想以上の進展がみられた。これらに関連して、一部は国際誌に発表し、一部は投稿中である。以上のようなことから上記の判断をした。
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今後の研究の推進方策 |
RNAサイレンシングとウイルスに関して、イネに感染するCMVの実験系を用いて、ウイルス防御反応との関連を、ウイルス蓄積量ならびに、CMVは3つのゲノムセグメントに分かれているので、各ゲノムセグメントの増殖に及ぼすOsRDR1遺伝子の影響を検討する。全量RNA抽出後のノーザンブロット解析を行い、各ゲノムについての蓄積量を検討し、OsRDR1が影響を及ぼすウイルス側のゲノムに特異性があるか否かについても検討を加える。また、OsRDR1を過剰発現させたイネを作成し、本形質転換イネがどのような防御反応を示すかについても解析を行う。本変異株におけるウイルスゲノム由来あるいは内在遺伝子由来のsiRNA、またマイクロRNA(miRNA)等の小分子RNA蓄積への影響を調査し、それらの蓄積量に及ぼるOsRDR1遺伝子の役割を明らかにする。③すでに一部のmiRNAについては組織特異的にOsRDR1が関与するデータが得られているので、それらの標的となるイネmRNAの合成あるいは翻訳への影響を検討する。また、OsRDR1の防御反応のウイルス以外の病原体感染に対する影響についても検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、試薬等の物品費や人件費などを中心に適切にかつ効率的に使用していく計画である。
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