研究課題/領域番号 |
24580066
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
木場 章範 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (50343314)
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研究分担者 |
大西 浩平 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (50211800)
曵地 康史 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (70291507)
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キーワード | タバコ植物 / フォスファチジン酸 / 免疫応答 / 耐病性植物 / 病害防除 |
研究概要 |
フォスファチジン酸キナーゼ(Phosphatidic acid kinase; PAK)遺伝子の単離と機能解析を行った結果、期待していた植物免疫応答への関与が顕著でないことが明らかとなった。そのためPAKに関する解析を中断した。そこで、PAK研究に代わって、フォスファチジン酸フォスファターゼ(Phosphatidic acid phosphatase; PAP)遺伝子抑制形質転換植物の解析、PAPプロモーターの解析に力を入れることに研究をシフトした。 CaMV由来35Sプロモーターの下流にヘアピン構造のRNAを発現する(RNAiコンストラクト)を用いて、フォスファチジン酸フォスファターゼ抑制形質転換タバコ(10系統)およびトマト(5系統)を作成の作出を完了した。形質転換タバコに関してはT3世代(固定系統)種子を十分両得ている。現在は、形質転換タバコ植物の耐病性検定を進めている。また、形質転換トマトに関しては、固定系等を得るための培養を進行中である。 また、フォスファチジン酸フォスファターゼ遺伝子プロモーターに関しては、Nicotiana benthamianaのドラフトゲノム配列より、フォスファチジン酸フォスファターゼに対応する配列情報を検索し、PCR法によって約2kbpのフォスファチジン酸フォスファターゼプロモーター領域の単離に成功した。プロモーターの配列情報からは、MYBやWRKY転写因子との相互作用が予想される入れるが複数存在することが判った。現在は、プロモータ全長、および種々のデリーションプロモーターとレポーター遺伝子の融合コンストラクトを作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PAKが植物免疫応答への関与が顕著でないという期待とは異なるが一定の結果を得た。また、フォスファチジン酸フォスファターゼ抑制形質転換植物に関して、タバコ直物では10系統作成し、耐病性等の詳細な検討を進める段階に到達した。また、実用作物への展開を図るべくトマト植物を用いたフォスファチジン酸フォスファターゼ抑制形質転換植物に関しても5系統得ることができた。さらに、フォスファチジン酸フォスファターゼ遺伝子のプロモーターの単離にも成功している。そのような理由から、おおむね計画通りに研究は遂行できているものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
フォスファチジン酸フォスファターゼ抑制形質転換タバコ植物10系統から、効率的にフォスファチジン酸フォスファターゼが抑制されている系統を選抜し、種々の病原体に対する応答を解析していく。 フォスファチジン酸フォスファターゼ抑制トマト植物に関して同様に固定系統を選抜し、耐病性検定に進める。 フォスファチジン酸フォスファターゼ遺伝子プロモーターに関しては、レポーター遺伝子との融合コンストラクトの作成、形質転換タバコ植物・培養細胞を作成し、フォスファチジン酸フォスファターゼ遺伝子の誘導に関わる植物細胞内情報伝達因子、病原体エフェクターの単離を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画ではフォスファチジン酸キナーゼ(Phosphatidic acid kinase; PAK)の解析を進める計画となっていた。実際に遺伝子の単離と機能解析を行った結果、期待していた植物免疫応答への関与が顕著でないことが明らかとなった。そのためPAKに関する解析を中断した。そのため、PAK遺伝子解析に用いる予定の予算に余剰が生じた。実際の研究推進にあたっては、PAK研究に代わって、フォスファチジン酸フォスファターゼ(Phosphatidic acid phosphatase; PAP)遺伝子抑制形質転換植物の解析、PAPプロモーターの解析に力を入れることに研究をシフトした。PAP抑制形質転換植物に関しては作成段階を終了しており、系統の選抜~解析へ至る段階に来ている。 そのため、余剰予算に関しては次年度のPAP抑制形質転換植物や進行中のプロモーター解析に用いることが効率的であると判断した。 PAP遺伝子抑制形質転換植物および対照植物に細菌、卵菌、ウイルス等の病原体を接種し、病原体の増殖、発病程度、防御関連遺伝子の発現を解析する。そのための植物培養、微生物培養等のための培地、培土等への使用が見込まれる。 また、病原性青枯病菌接種N. benthamiana由来のcDNA、病原性青枯病菌のエフェクター遺伝子恒常発現cDNAライブラリーを調製する。恒常発現cDNAライブラリーを用いて、PAPを誘導する機能を有する植物因子、病原体エフェクターの同定を行う。また、種々の植物ホルモンを含むケミカルを用い、PAP発現を制御可能な化学物質の選抜を行う。そのため、遺伝子ライブラリーの構築のための分子生物学試薬、ケミカルライブラリーの購入が予定される。さらに、種々の学会での情報収集や成果発表のための旅費にも使用する予定である。
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