キュウリモザイクウイルス(CMV)の感染が植物の遺伝子ジーサイレンシング機構(PTGS)に及ぼす影響を明らかにするために,導入遺伝子が誘導するPTGS, CMVによるvirus-induced gene silencing(VIGS),内在性遺伝子制御PTGSの3つの機構について,CMV2次感染により2次PTGSが抑制されるかどうかを検討した. GFP(約800 nt)が恒常発現するタバコにGF領域(70-530 nt)の逆位反復配列を導入し,GFP蛍光が消失したGF-IR/GFPタバコを作出した.しかし,GF-IR/GFPタバコではP領域(530-800 nt)由来のsiRNAが検出されず,GF-IRによるPTGSでは3′方向への2次PTGSは誘導しないことがわかった. CMV RNAに30塩基のGFP配列(429-458 nt)を付加し,野性型2bをもつpepo-F30と弱毒型2bをもつR46C-F30を作出した.GFP恒常発現タバコにそれぞれを接種したところ,CMVによるVIGSにおいても5′方向へは2次VIGSが誘導されるが,3′方向への2次VIGSは起こらないことがわかった.5′方向への2次VIGSは両ウイルスで同程度起こっていたことから,CMV感染が2次VIGSを阻害するという仮説は確認できなかった. CMV感染により内在性遺伝子制御経路が抑制されるかどうかを検討した.宿主には遺伝子解析が進んでいるシロイヌナズナを用いた.野性型のpepoと弱毒型のR46Cが感染したシロイヌナズナにおいて,1次PTGSの標的であるARF8-mRNA,および,2次PTGSの標的であるARF4-mRNAとPPR-mRNAの発現量を調査した.その結果,内在性遺伝子制御PTGSではCMVは1次および2次PTGSの両方を阻害している可能性が示された.
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