研究課題/領域番号 |
24580072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
研究代表者 |
向原 隆文 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (80344406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病原性因子 / 青枯病 / エフェクター / エリシター / 宿主域変化 / Hrp |
研究概要 |
我が国のナス栽培の歴史において、ヒラナスはトルバム・ビガー(トレロ)台木の前に全国的に広く利用されていた台木であり、我々が全エフェクターを特定したRS1000株(II群菌)に抵抗性を示す。しかしながら、連続的な台木使用により、ヒラナスを侵すIII群菌が出現した。トルバム・ビガー(トレロ)に感染性を示すBK1000株(IV群菌)はIII群菌が変化して生まれたと推察されるため、当初の研究計画で解析対象としていたナス台木トルバム・ビガー(トレロ)にヒラナス台木を加え研究を行った。 まず最初に、RS1000株(II群菌)のエフェクター欠損株のシリーズを用いて、ヒラナス台木が青枯病菌の72種類のエフェクターのどれを認識して抵抗性を誘導しているかを確認した。温度・照度制御下における精密接種実験から、これまでにヒラナスが少なくとも3種類の青枯病菌エフェクター(Rip36、PopP1、AvrA)を認識して抵抗反応を誘導していることを明らかにした。抵抗性への寄与度はRip36認識>PopP1認識>AvrA認識の順であり、ナス台木の青枯病抵抗性が重層化した複数の抵抗反応に基づくことを初めて明らかにできた。 青枯病菌の各菌群(II群菌、III群菌、IV群菌、)が有するエフェクター分布の比較から、II群菌からIII群菌が出現する過程でRip36及びPopP1が消失していることが明らかとなった。以上の結果から、青枯病菌の宿主域変化には、抵抗性台木に認識される非病原性(Avr)エフェクターを消失させてEffector-triggerd immunity (ETI)を回避する機構が存在すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を遂行するにあたり、当初予定していた青枯病菌のII群菌およびIV群菌の解析から、II群菌(ヒラナス、トルバムに非病原性)→III群菌(ヒラナスに病原性、トルバムに非病原性)→IV群菌(ヒラナス、トルバムに病原性)という宿主域変異機構の解析とした。これにより、我が国のナス栽培における台木利用の変遷に対応した青枯病菌の菌群変化の原因を探ることが可能になり、研究に連続性をがもたらされると確信している。 実際の解析においては、研究代表者のみが有する一連のエフェクター欠損株シリーズを活用して、ヒラナスが認識するエフェクターを同定できた。これにより、実験手法の有効性を確認することができたため、次年度のトルバム・ビガー台木の解析を速やかに遂行できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
RS1000株(II群菌)のエフェクター欠損株のシリーズを用いて、トルバム・ビガー台木が青枯病菌の72種類のエフェクターのどれを認識して抵抗性を誘導しているかを確認する。精密接種実験により、個々のエフェクター認識がどれくらい抵抗性に寄与するかを確かめるとともに、重要なAvrエフェクターがIV群菌で保持されているかどうかを検証する。 植物の病害抵抗性にはETIに加えPAMP-triggerd immunity (PTI)も重要な貢献を果たしていると予想されるが、上記のエフェクター解析のみでは、エリシターとして認識されるPAMPの変化やその他の宿主域変化に関わる病原菌因子の同定は難しい。よって、今後は各菌群の代表株の全ゲノム配列を次世代シーケンサーを用いて決定し、各ゲノム配列の比較から菌群の宿主域変化に対応するような遺伝子変異をピックアップする作業も並行して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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