研究課題/領域番号 |
24580073
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
仲島 義貴 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80322882)
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研究分担者 |
田渕 研 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90531244)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 害虫管理 / 景観生態学 / 移動 / ビート / アルファルファ / コムギ / ヨトウガ / アカヒゲホソミドリカスミカメ |
研究概要 |
害虫管理や天敵昆虫の保護利用において対象圃場の周辺環境を考慮することの重要性は古くから指摘されてきたが、実際には、単一圃場か圃場に近接した環境との関係を調べる研究にとどまっていた。近年の地理情報システム(GIS)や統計的手法の発展により、これまで未知であった広域スケールからみた害虫と天敵の移動パターンを知ることが可能になりつつある。本研究では、これらの技術を駆使し、牧草地と畑作物圃場間の害虫と天敵の広域的・季節的な移動パターンとそれを決定する要因を評価した。 畑作物の害虫が多く生息する牧草地は、畑作物害虫の供給源や受け皿になる可能性がある。本研究では、このような牧草地の機能を明らかにするため、主要な害虫種(カスミカメムシ類とチョウ目)について、牧草・畑作物間の移動パターンの推定を行った。 約40の牧草地で6月中旬、8月上旬、10月上旬に昆虫類の採集を行うとともに、調査した牧草地から半径3 km以内の作目(景観要素)を地図に記録し、GISで各要素の面積を算出した。牧草地内の害虫個体数と景観要素の面積間の関係について解析を行った結果、アカヒゲホソミドリカスミカメはコムギから牧草地へ、マキバカスミカメは牧草地から畑作物へ、ヨトウガとモンキチョウは畑作物から牧草地へ移動することが推定された。これらの結果と各害虫種の生活環などの生物学的な特性から、牧草地は害虫の供給源(マキバカスミカメ)や越冬場所のような受け皿(アカヒゲホソミドリカスミカメ、ヨトウガ、およびモンキチョウ)になり、害虫種や時期によりその役割が異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.調査地の設定:帯広市およびその近郊の40の牧草地牧草地を調査地として予定通り準備することができた。 2.牧草地での昆虫類の採集:予定していた調査方法で、昆虫類を採取することができた。採集された昆虫類の同定も問題なく実施できた。 3.圃場周辺環境の調査:昆虫採集を行った牧草地の周辺半径3キロメートルに存在する作物の作目、森林、雑草地などをすべて記録し、地理情報解析のソフトウェア(ArcGIS など)上で統合・編集し、解析可能な定量的なデータベースを構築した。周辺環境の調査、ソフトウェアの操作ともに大きな問題もなく実施できた。得られたデータの解析においても具体的な方針が固まり、大まかな結果を得ることができたので、これらの結果をもとに、さらに調査解析を今後行う予定である。 4.分担者との連携:頻繁にメールなどで研究の計画、データ収集、解析などに関する打ち合わせを行うとともに、現場(帯広市およびその近郊の圃場)での議論も行うことができ、良好にすすんだ。
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今後の研究の推進方策 |
野外調査およびデータのとりまとめと解析については、おおむね問題なく実施できたので、今後もデータの信頼性を高めるために同様の野外調査を繰り返し行う。 ただし、昨年度の調査・解析の結果、調査に適さない牧草地(農薬の使用が認められるなど)があったこと、牧草地周辺の植生調査の範囲(半径3キロメートル)が大きすぎることがわかってきたので、データ取得の効率を考慮し、調査対象の牧草地を15ほど減らし、周辺環境の調査範囲は半径3キロメートルから2キロメートルに減ずる予定である。一方で、結果の一般化に役立つ知見を得るために、帯広市とその近郊の牧草地だけでなく、道内のほかの地域の牧草地においても調査していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定した作業内容のほとんどについて謝金を使わずに実施することができたため、予定していたよりも少ない謝金の支出となった。余剰分に関しては、さらに蓄積が予測されるサンプルの整理のための謝金に充てる予定である。
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