研究課題/領域番号 |
24580073
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
仲島 義貴 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80322882)
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研究分担者 |
田渕 研 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90531244)
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キーワード | 天敵利用 / 景観生態学 / 害虫管理 / 寄生蜂 / アブラムシ / 牧草地 |
研究概要 |
農耕地に生息する害虫の天敵は人為的な撹乱(耕起や収穫など)により劇的に減少することが知られている。このため、越冬場所や餌資源などを供給する非農耕地(森林や畦畔など)から作物圃場への移入は天敵の働きにおいて重要と考えられる。さらに、より高い栄養段階の天敵が非農耕地からの影響が強く受けるとする研究例もあるがその一般的な傾向は明らかになっていない。本研究では、牧草地に生息するエンドウヒゲナガアブラムシ(以下、アブラムシ)の捕食寄生性天敵(一次寄生蜂、高次寄生蜂)の寄生率に周辺の非農耕地の存在が及ぼす影響を評価した。北海道十勝管内の14カ所の牧草地において1番草と3番草の刈り取り前に、アブラムシのすくい取りとマミーの見つけ取りを行い、室内で採集個体を飼育することにより寄生率を求めた。さらに、GISを用いて各調査圃場から半径500 m内の作目や植生タイプごとの面積や長さを定量化し、圃場周辺の景観要素と捕食寄生性天敵の寄生率との関係を評価した。この結果、一次寄生蜂はAphidius erviと Praon barbatumが、高次寄生蜂は Asaphes suspensusとDendrocerus carpenteriが採集された。一番草(6月中旬)において、A. erviやA. suspensusは牧草地周辺の非農耕地(草地、森林、雑草地)の割合、P. barbatumは畦畔長の増加とともに寄生率が増加したが、D. carpenteri は周辺環境の影響が認められなかった。三番草(10月上旬)においてはP. barbatumのみ寄生率の増加に、非農耕地が影響した。寄生蜂は寄主の体内で越冬するため、作物圃場への移入を開始する初期の餌資源の供給源や越冬場所として非農耕地の利用が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.調査地の設定:帯広市およびその近郊の15の牧草地を本調査地とし確保できた。 2.牧草地での昆虫類の採集:予定していた調査方法で、昆虫類を採取することができた。採集された昆虫類の同定、アブラムシの寄生蜂の寄生率の評価も問題なく実施できた。 3.圃場周辺環境の調査:昆虫採集を行った牧草地の周辺半径500メートルに存在する作物の作目、森林、雑草地などをすべて記録し、地理情報解析のソフトウェア(ArcGIS など)上で統合・編集し、解析可能な定量的なデータベースを構築した。牧草地周辺の作目ごとの栽培面積、森林面積および畦畔長の定量化も技術的に可能とした。 4.分担者との連携:メール、および訪問しての議論などで主に解析などに関する打ち合わせを行うことができ、課題をすすめるうえで有意義な連携を保っている。
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今後の研究の推進方策 |
野外での本調査を行うための調査圃場の選定も終わり、データ解析状の技術的問題もほぼ解決した。今後もデータの信頼性を高めるために複数年の野外調査を繰り返し行う。 当初予定したクモ類の同定や解析についてはその個体数がそれほど多くないため解析から除外する方向で考えている。 本課題は十勝地方で行うが、道内の他の地域でも本研究の成果を応用できるかを検討するため、道東、道北の他地域の牧草地で昆虫類の採集をおこない、種構成などの傾向を確認する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた謝金と消耗品費の使用を大幅に減らし、旅費に大部分を費やしたため予定額より少ない使用となった。 平成26年度はより多くの旅費の使用も見込まれるため、平成25年度分と合わせてすべての予算を執行する予定である。
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