研究実績の概要 |
茶樹の重要害虫であるチャハマキの野外個体群において、オスの幼虫および蛹の選択的致死(late male-killing)により、成虫の性比がメスに偏る系統(SR系統)が存在し、その原因因子がRNAウイルスであることを申請者らの研究により明らかにした。一方、2009年に静岡県で採集したチャハマキ(静岡系統)において、本ウイルスに感染していないにもかかわらず、孵化率が低く、性比がメスに偏る系統(early male-killing)を発見した。本研究では、静岡系統でのearly male-killingの原因因子を調査し、チャハマキにおけるオス殺し現象の全貌を解明することを目的としている。 静岡県島田市の圃場にて、2012年から2014年にかけて10世代にわたってチャハマキを採集し、オス殺し因子の有病率の季節的変動を調査した。有病率の季節的変動はSpiroplasmaが0.9%~15.1%、RNAウイルスが4.3%~12.9%の間を推移した。SpiroplasmaおよびRNAウイルスに混合感染していた個体の割合は0%~2.7%の間を推移した。 RNAウイルス単独感染系統の雌成虫腹部磨砕液を4℃、1,500×g、20分間遠心分離した。その後、上清を新しい1.5mlマイクロチューブに移し、4℃、10,000×g、60分間遠心分離した。得られた上清は0.45µm、0.22µm径のフィルターで順次濾過した。昨年作出したSpiroplasma単独感染系統の4齢幼虫に濾液を注射接種し、SpiroplasmaおよびRNAウイルス混合感染系統(混合感染系統)を作出した。各系統の生態学的特性を調査した結果、幼虫期間は、RNAウイルス単独感染系統と混合感染系統がフリー系統とSpiroplasma単独感染系統と比べて有意に長かった。また、蛹の重さは、RNAウイルス単独感染系統が他の系統と比べて有意に軽かった。
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