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2013 年度 実施状況報告書

原始的な花粉媒介システムにおける花香放出のタイミングと甲虫の概日リズムの関係

研究課題

研究課題/領域番号 24580077
研究機関三重大学

研究代表者

塚田 森生  三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (20273352)

研究分担者 森川 由隆  三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (40283519)
秋野 順治  京都工芸繊維大学, 生物資源フィールド科学教育研究センター, 教授 (40414875)
キーワード花粉媒介 / 甲虫 / チェリモヤ / バンレイシ / アテモヤ / 概日リズム
研究概要

ハナバチの働かない有用植物について、進化の歴史をよく理解し、生産性の向上に資することを目的として、バンレイシ科の果樹チェリモヤやアテモヤを材料として、甲虫による訪花や花による甲虫の誘引などを明らかにしてきた。本年は、2年目として、花香の放出のタイミングを、チェリモヤ、バンレイシおよびこれらの交雑種であるアテモヤにおいて野外で長時間連続調査した。チェリモヤでは18時前後に性ステージが♀から♂に変化し、通常♀ステージで一度、♂ステージになるときに一度の計2回花香放出のピークが存在した。これらは通常は18時前後にみられるが、6時前後の場合もある。ただし、♀ステージに2回ピークがある場合もあった。バンレイシでは性ステージの変化は6時前後に起こり、この時と、♀ステージの18時前後の合わせて2回、ピークがあることが多い。一方、アテモヤでは性ステージの変化は18時前後で安定していたものの、花香放出は♀ステージの6時と変化時の18時であることが多いもののその中間の12時前後にピークがみられる場合もあるなど、この形質はやや不安定であった。以上の結果は、チェリモヤとバンレイシは近縁ではあるが甲虫を誘引するための花香放出のタイミングに関しては異なる戦略をとっていること、アテモヤは両親と異なるパタンを持つことを示している。
赤外線による感知装置は完成し、現在クリイロデオキスイの行動の解析を行っている。現在データの蓄積中であるが、概略としては、夜間、特に朝夕の時間帯に行動が活発となるようである。これは、上記の花香の放出パタンと対応していると考えられる。花内の甲虫の経時分布も調査し、解析中である。
花香の採取はアテモヤとバンレイシで進んでおり、チェリモヤは2014年度に採取したい。分析はこれからであるが、それぞれの植物で、ステージが異なると花香成分に違いがあることは間違いなさそうである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」で述べたとおり、赤外線による行動記録装置の開発は終わり、データ収集中である。これは、本年度の研究計画通りである。これに加えて、花香の放出パタンの経時的な変化に関する重要なデータが得られている。甲虫の花への出入りの情報は直接的には調べられなかったが、これを間接的に調べるために花内の個体数の経時変化を調べている。したがって全体としておおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2014年度も、赤外線行動記録装置を活用して昆虫の概日リズムに関するデータの集積に努める。必要に応じて装置の改善にも取り組み、より信頼できるデータを、効率よくとれるようにする。昆虫の密度条件を変えて実験を行うとともに、温度、照度、湿度条件に関する信頼できる記録を取る。装置に導入する種はこれまでクリイロデオキスイ1種のみであったが、これ以外の有望な花粉媒介者としてモンチビヒラタケシキスイとカタベニデオキスイも同様に実験対象としてより汎用性のあるデータを得る。
野外(石垣島)への調査出張を行い、花への昆虫の飛来時間の厳密な決定を行う。このため、つぼみ段階でいったん目の細かい網をかけ、特定の時間にはずし、一定時間後に訪花者を採取するという作業を繰り返す。材料とする植物は、チェリモヤ、アテモヤ、バンレイシの3種である。
花香の放出の経時変化のパタンについては本年度チェリモヤのデータが少なく、信頼性が低かったので、材料が入手できればこれを優先的に調べたい。ただし、バンレイシおよびアテモヤについても引き続き調べる。化学分析に関しては引き続きGC/MSを活用して物質の同定を進めることで、ステージ間・種間の違いを明らかにする。また、得られた花香成分を用いて甲虫の誘引実験を行う。

次年度の研究費の使用計画

当初予定と比べて、行動解析装置に使用する部品等の価格を抑えたほか、三重大学で使用した昆虫採集等にかかる消耗品が当初予想より少なかった。また、昆虫行動のデータは順調に集まっているものの、解析に本格的に手を付けていないので、これに関する学会発表旅費を使用しなかった。これらを無理に使うより、次年度に持ち越してデータ解析・論文作成に回す方が効率が良いと判断した。
当初計画よりも野外での調査を大がかりに行う計画とし、調査旅費を多く使用する。このほか、学会発表旅費も遠隔地での大会が多いので当初予定より多く使用する。このほか、効率的な論文執筆のためにソフトウェア、ハードウェアの購入を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 小型甲虫を誘引するAnnona属虫媒花の花香成分2014

    • 著者名/発表者名
      近藤陽香
    • 学会等名
      日本生態学会大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      20140316-20140316
  • [学会発表] Annona属植物の花香放出と甲虫による訪花のタイミング2014

    • 著者名/発表者名
      西智生・塚田森生
    • 学会等名
      日本昆虫学会・日本応用動物昆虫学会合同東海支部会
    • 発表場所
      金城学院大学
    • 年月日
      20140301-20140301

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公開日: 2015-05-28  

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