研究概要 |
Prostaglandin E synthase (PGES)は,Prostaglandin HからProstaglandin Eを合成する酵素である.平成25度は,カイコ由来PGES組換えタンパク質とグルタチオン類縁体の一種であるglutathione sulfonic acid (GTS)との相互作用について解析した.sitting-drop蒸気拡散法によりPGES-GTS複合体の結晶を作製することに成功した.この複合体結晶を用いてSPring-8においてX線回折実験を行い,分解能1.37Åの回折強度データを得た.分子置換法により位相を決定し,精密化をすすめて全体構造を決定した(Rwork/Rfree=15.6%/18.2%).昨年度得られたPGES-グルタチオン(GSH)複合体同様に,PGESはホモダイマーを形成し,モノマー構造は9本のαヘリックスならびに4本のßストランドより構成されていた.また,mosquito由来のdelta-class glutathione transferase中で観察されたelectron-sharing networkも本酵素中に存在することが明らかとなった.PGES配列中のAsn96,Asp97そしてArg99は,このnetworkを構成しており部位特異的アミノ酸置換法によりこれらのアミノ酸をそれぞれAlaに置換した.これらの変異が活性に与える影響を検討した結果,いずれの変異体も野生型と比較して50%の活性低下が見られた.さらに,ほ乳類由来prostaglandin synthase構造と重ね合わせた結果,Tyr8, Lue14, Tyr107, Lys117, Val155, Met159, Glu203が基質認識に関与していることが予想された.
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