研究課題
本研究では、水田において各種の栽培管理法(化学農薬の使用量や施肥量)、寄主や獲物となる他種の分布、さらには周辺環境の状態などが、いかに有用天敵昆虫やクモ類の豊富さを決定するかに焦点を当て、どのような生物種が指標種として優れるかを明らかにすることを目的としている。それらを明らかにすることにより、候補種の分布状況や密度を効率的に予測でき、また精度の高いモニタリングが可能になる。調査結果、指標候補を含む有用生物の多様性と、害虫の多様性・発生量や中立種(ただの虫)の多様性など、他の生物群との関係を多面的に明らかにできた。節足動物や天敵生物の総種数や個体数は殺虫剤の使用カウント数により負の影響を受けた。周辺の森林面積率は限定的で、水田面積率もほとんど影響していなかった。一方、雑草地や休耕地の面積率は大きな影響を及ぼしており、面積が増加するほど種数は増加した。隣接環境も有意な要因であった。水田が、森林、水田、雑草地、人工物(道路や家屋など)に隣接しているかどうかは節足動物の総種数に大きく影響した。水田に生息する節足動物の多くは、周辺の雑草地などに主に生息しており、そこから水田内に侵入定着するものと考えられた。また節足動物全体の多様性は捕食寄生者と捕食者の個体数と種数に影響していた。捕食寄生者においては、これは間接的な効果であって、全体の多様性が高い水田ほど寄主となる特定種の密度が高く、その結果としてそれらの捕食寄生者が増えた。一方、節足動物全体の多様性が高い水田ほどコモリグモを含むクモ類の個体数が多かったが、これは生物多様性が高いとジェネラリストの捕食者の餌メニューが豊富になるためクモ類の繁殖に適した環境にであるためと示唆された。これらの結果は、スペシャリストの多い捕食寄生者よりも、ジェネラリストの多い捕食者の方が指標種として適した種やグループが多いことを意味していた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件)
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