研究実績の概要 |
カイコゲノムの19座位に散在するCIM{Cecropia蚕のmariner-like element(MLE)転移因子の末端逆位繰り返し配列(ITR)をプライマーとして増幅される全長MLE:Bmmar2に分類される}中の1座位、BmTNML領域(MLEにレトロトランスポゾンBMC1が挿入され、さらにL1Bmが挿入された転移因子の3重構造)を持つカイコ♀個体とBmTNML領域を持たないクワコ(九州産)♂個体を交配させたF1世代の♀♂数個体についてBmTNML座位の動向を追跡したところ、一定の割合でこの領域を持つカイコ―クワコのヘテロ型個体の出現を確認できた。前年度までの結果と統合すると、日本クワコ♂の生息場所に拘らず、交雑次世代においてはカイコ♀由来のBmTNML座位を持つ個体が出現することが明らかになった。さらにF2,F3世代、またF1をカイコ♀♂と交配した集団において、BmTNML座位を保持している個体を確認できた。一方カイコの♂とクワコ九州産♀, 関東産♀を交配させたF1, F2世代においてもBmTNLM座位を維持した個体が確認された。これらから、日本クワコにおいて、BmTNML座位の有無を調査することは、カイコとの交雑の可能性を確認できる簡便なスクリーニング法として有効であることが示唆された。 また、交雑個体でのR2Bmの5'欠失プロファイルは、クワコ親個体(集団)のゲノム中でのR2の分布に依存し変動することが確認できた。 BmTNML座位以外の数箇所の座位へのCIMの挿入年代推定の結果から、CIMはカイコとクワコの共有祖先のゲノムへほぼ同時に挿入された可能性が高いことが示唆されたが、全ての座位を解析してはいないので、今後も他の座位についての解析を継続する。 インドクワコのCIMはカイコのBmmar2に相当することが予測されたが他のBmmarに関してカイコ、クワコのMLEと強い相関を持つ結果を得ることはできなかったので、ゲノムの情報からのアプローチを試みる予定である。
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