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2013 年度 実施状況報告書

キノンイソメラーゼが触媒する昆虫外骨格の硬化反応

研究課題

研究課題/領域番号 24580081
研究機関首都大学東京

研究代表者

朝野 維起  首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40347266)

キーワード外骨格 / 硬化 / 国際研究者交流 / アメリカ
研究概要

昆虫の外骨格はキチン・キチン結合タンパク質を主な成分とする非細胞性マトリクスである。脱皮前、古い外骨格の下に作られる新しい外骨格は多くの場合、柔らかく殆ど色もない。しかしながら、脱皮に伴って硬化着色し、外骨格本来の機能を果たすようになる。本研究は、ラッカーゼ系による外骨格成分の架橋反応について、特に注目している。フェノール性基質がラッカーゼによって酸化されて生じるキノン(quinones)類や、キノン類が異性化されて生じるキノンメチド(quinone methides)類によって、タンパク質同士、タンパク質-キチン間の架橋が形成されると考えている。現在、このキノンをキノンメチドへと異性化する反応を触媒する「キノンイソメラーゼ」に関する研究を進めている。この酵素は、まだ一部で精製が報告されたのみで、遺伝子は特定されていない。N-アセチルドーパミンが酸化されて生じるN-アセチルドーパミンキノンを用いて検出することにより、この酵素の精製を進めている。25年度は、前年度と同様に各種クロマトグラフィーを行い、酵素を含むフラクションの濃縮を行った。また、既に同定されている酵素ではあるが、キノン生成に関わるラッカーゼ自身が、キノン生成に伴ってキノンイソメラーゼとして機能し得ること等がアメリカの研究者から言及されており、その研究者らが用いている昆虫種(タバコスズメガ)を用いたラッカーゼ機能の調節機構に関わる研究を行った。特に、プロテアーゼによる切断(プロセシング)によって生じる、高活性型分子種の機能などについて調べた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の目標では、家蚕外骨格抽出液から酵素を精製し、アミノ酸配列等を明らかにすることにより遺伝子の特定や、発現量変化、発現場所の特定等を行う予定であった。しかしながら、現在もまだ精製完了には至っていない状況である。この酵素の抽出量を向上させること、および精製の効率を向上させることが、今後の課題と言える。また、精製途上の試料から、エドマン分解や、マススペクトルメトリー等による同定作業を、現在検討中である。
本研究進行中、アメリカの研究者とともに、外骨格硬化の研究として、キノンイソメラーゼとして機能しうる酵素である、ラッカーゼに関しても研究を行った。この酵素は、既に遺伝子も特定され、昆虫独自のタンパク質であることが知られている。タバコスズメガを用いた研究では、この酵素によってN-β-アラニルドーパミンが酸化されてN-β-アラニルドーパミンキノンが生成される際にキノン異性化反応も生じるとされる。タバコスズメガラッカーゼのcDNAを用いた組み替えタンパク質をバキュロウイルス系で合成している。また、タバコスズメガラッカーゼの機能調節等について、特にプロテアーゼによるプロセシングの結果起きる活性上昇についても調べている。現時点で、キノンイソメラーゼの精製は、まだ終了していないが、タバコスズメラッカーゼのcDNAを譲渡した研究室のメンバーとともに、「ラッカーゼ-キノンイソメラーゼ」によって外骨格形成中に起きる反応について、理解を深める努力をしている。

今後の研究の推進方策

キノンイソメラーゼの精製を引き続き行うが、電気泳動像上で単一バンドになるまで精製する前に、ある程度、アミノ酸配列に関する情報を得る努力が重要になってくる。この目的に、代表者が所属する研究組織にごく最近導入された、ペプチド同定用として高性能である質量分析システムが活用出来ると考えている。得られた配列情報を元にcDNAを検索し、リソースセンターから家蚕のcDNAを入手して、組み替えタンパク質等を合成する。得られたタンパク質の活性を調べることで、目的酵素の遺伝子が明らかになるのではないかと考えている。また、これまではN-アセチルドーパミンのみを用いてきたが、N-β-アラニルドーパミンが酸化された際に生じるとされる異性化反応も、外骨格硬化には重要である。ただし、この反応を調べるための基質であるN-β-アラニルドーパミンは、N-アセチルドーパミン同様市販されておらず自ら合成しなくてはならない。現在、有機合成系の研究者と合成方法等について検討している。N-β-アラニルドーパミンを用いることで、ラッカーゼ・キノンイソメラーゼによって起きるとされる異性化反応についてより詳細に調べることが出来る。また、試験管内で1)ラッカーゼ、2)基質、3)キノンイソメラーゼによって進行する架橋反応によって生じるモデルペプチドの多量体を、アミノペプチダーゼ等によって分断した後に質量分析を行うことで、生じた架橋構造が決定出来る可能性があるといえる。

次年度の研究費の使用計画

本研究を進める過程で5ヶ月強アメリカの研究者を訪問した。その際に訪問先にある試薬や機器などが大部分利用出来た他、試料として用いる昆虫の飼料等こちらが負担する必要がなかったことが大きな原因である。
次年度使用分については、物品費として試薬や昆虫飼育に必要な消耗品等に用いる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 昆虫外骨格内に存在するメラニン合成酵素2013

    • 著者名/発表者名
      朝野 維起
    • 雑誌名

      比較生理生化学

      巻: 3 ページ: 106-114

    • DOI

      10.3330/hikakuseiriseika.30.106

    • 査読あり
  • [学会発表] 昆虫外骨格形成に必須な遺伝子lac- case2 の機能解析2013

    • 著者名/発表者名
      相澤 研介, 相垣 敏郎, 朝野 維起
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20130926-20130928
  • [学会発表] 昆虫脱皮時のラッカーゼ活性調節2013

    • 著者名/発表者名
      朝野 維起
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      岡山
    • 年月日
      20130926-20130928

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公開日: 2015-05-28  

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