研究課題
本研究は、昆虫外骨格硬化の必須因子であるラッカーゼ2によって生成されたキノンが、さらにキノンメチドへと変換される反応を触媒する因子である「キノンイソメラーゼ」の精製及び、性状解析等を目的とした。精製については、ほぼ最終精製物にまでたどり着いたところである。4つの主要な節足動物(多足類、鋏角類、甲殻類および昆虫類)のゲノム情報を利用して行った分子系統解析の結果、外骨格硬化に関わるラッカーゼ2遺伝子が、昆虫特有の遺伝子であることが判明した。これは、「カテコール類の酸化反応を利用した外骨格硬化」が昆虫独自に発達した系である可能性を示唆する。昆虫がいち早く陸上へ進出し繁栄を誇るようになった要因の一つとして、カルシウムに頼らない外骨格硬化が貢献した可能性も考え得る。ラッカーゼ2に加え、キノンイソメラーゼも昆虫で独自に発達した分子であるのかが、非常に興味深い。この他、N-アセチルドーパミン(NADA)に加えて、ラッカーゼのもう一つの重要な基質であるN-β-アラニルドーパミン(NBAD)の合成も行った。有機合成系の研究者からの指導を受けつつNBADを合成し、NMRによる評価を行う等して高純度の標品である事を確認した。これは、今後も外骨格の硬化反応を経済的かつ効率よく研究するうえで大変重要である。また、アメリカの研究室から得たタバコスズメガラッカーゼ2のcDNAを用いて、バキュロウイルスの系を利用した組み替えタンパク質合成を行った。このタンパク質によってNBADキノンが生成する時に、NBADキノンメチドの生成も伴う事が報告されている。外骨格で生じる化学反応の全貌を明らかにするためにラッカーゼ自体によるキノンメチド生成の関与も詳細に調べなくてはならない。精製標品を用いた解析から、活性制御を受けることなど、家蚕ラッカーゼ2と同様な性質をもつことは確認できた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Insect Biochemistry and Molecular Biology
巻: 55 ページ: 61-69
10.1016/J.ibmb.2014.10.004
Scientific Reports
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