研究課題
本研究は、昆虫無細胞タンパク質合成系を有力なタンパク質生産・解析手段の一つにするべく、その利用基盤を構築することを目的とした。本研究では、以下の新たな知見を得ることができた。1.カイコ無細胞タンパク質合成系において翻訳を促進する機能を有する40塩基からなる Spodoptera frugiperda 核多角体病ウイルス(SfNPV)由来ポリへドリン遺伝子の5'非翻訳領域(5'UTR)をスクリーニングによって見出した。次に、SfNPVポリへドリン遺伝子5'UTRの5'末端、3'末端から2塩基ずつ削除していった変異体など、合計56種類の変異体を作製し、翻訳促進配列削除の影響を調べた。その結果、3'末端から18bp(5'-ACATTGTGAAAAAATAAA-3')の配列を翻訳し促進配列を用いた場合に、もとの配列の場合よりも約1.3倍のタンパク質合成量を示した。これにより、翻訳促進配列中の翻訳促進に重要なコアとなる配列を見出すことができた。2.活性化にシャペロンを必要とする放線菌Streptomyces sp. REN-21由来有機溶媒耐性チロシナーゼをモデルタンパク質として用い、昆虫無細胞合成系における最適な共発現条件を決定した。その結果、シャペロンとチロシナーゼは、1:1の関係で相互作用し、銅イオンの受け渡しを経てチロシナーゼが活性化することが示唆された。この一連の実験において、Strep-tagII配列を用いて迅速に相互作用の様子をウエスタンブロット解析することができるようになり、昆虫無細胞タンパク質合成系における共発現解析システムの構築に成功した。3.水溶液中で不溶化する膜結合性タンパク質である放線菌Streptomyce lavendulae REN-7由来耐熱性ラッカーゼをモデルタンパク質として用い、昆虫無細胞合成系における最適な発現条件の検討を行った。その結果、効率的に活性を有するラッカーゼを発現することに成功し、ウエスタンブロット解析も含めた膜結合性タンパク質の発現解析システムを構築した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS ONE
巻: 9 ページ: 1-17
10.1371