研究課題/領域番号 |
24580085
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
宮澤 光博 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究ユニット長 (90370684)
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研究分担者 |
山崎 俊正 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (40360458)
石田 裕幸 富山県立大学, その他部局等, 研究員 (90509861)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 化学交信 / フェロモン / 分解酵素 |
研究概要 |
昆虫は多種多様な有機化合物を用いて情報の伝達を行っている。このうち性フェロモン受容システムの感受性は極めて高く、フェロモン分子の受容とシグナル伝達のリセットを担うタンパク質がその役割を果たしている。フェロモン分子の受容に関する研究は、近年大きな進展が見られる一方、フェロモンシグナルが一旦リセットされ、新たなフェロモン分子の受容に備えるプロセスの知見は殆ど得られていない。そこで本研究は、モデル生物として有用性の高いカイコガ成虫を用いて、性フェロモン(ボンビコール)を不活化するタンパク質の同定を行い、カイコガ性フェロモン不活化因子の分子機構を明らかにすることを目的として研究に着手した。 カイコガ成虫のフェロモンは、ボンビコール(10E,12Z-hexadeca-10,12-dien-1-ol)と呼ばれるアルコール分子である。そこで水酸基を有するボンビコールが、アルデヒド基を持つボンビカールに変換する酵素が、フェロモン分子を直接不活化する因子と推定し、その化学反応を担うと思われるアルコールデハイドロゲナーゼ、およびアルコールオキシダーゼの候補遺伝子を、カイコゲノムのデータベースを用いて探索を行った。その結果、アルコールデハイドロゲナーゼは多くの候補遺伝子が見出されたが、アルコールオキシダーゼに関連する候補遺伝子は見出されなかった。 次にカイコガの触角抽出物についてnative PAGE-活性染色法を用いて酵素活性の解析を行った。その結果、アルコールデハイドロゲナーゼとアルコールオキシダーゼの両者が存在することを見出した。一方、脚部の抽出物では両方の酵素の存在は見出されなかった。従ってこれらの酵素のいずれかが、ボンビコールをボンビカールに化学変換し、フェロモン分子を不活化するものと推察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェロモン分解酵素として推定された酵素が、触角に特異的に存在することを明らかにできたが、その存在量が予想より極めて低濃度であったため、N末端アミノ酸解析、およびMALDI-TOF-MASによる配列解析において良好な結果が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
さらに多くのカイコ蛾の触角を採取し、触角抽出物のホモジネート上清液から、各種液体クロマトグラフィーを用いてボンビコール分解因子を単離し、N末端アミノ酸配列の解析、およびMALDI-TOF-MAS法による部分アミノ酸配列の解析を行う。得られたアミノ酸配列情報からcDNAのクローニングを行い、全塩基配列を決定し、得られたcDNA情報を基に、外来遺伝子発現系を用いて組換えBmorPDEの大量調製に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に行った実験スケールでは得られた天然試料の量が微量であったため、次年度はさらにスケールを大きくして試料の抽出を行う。そのため試料の大量採取と、適宜タンパク質の定量を行うための契約職員を採用し実験を進める。また分離能の高い高速液体クロマトグラフィー対応のカラム(陰イオン交換樹脂型、ハイドロキシアパタイト型)を購入し、タンパク質の分離・精製を進める。
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